日本の住居から和室がなくなってから久しい。今あるのは、和室もどきの箱のようなものしか見当たりません。和室がなくなった理由はいくつかありますが、第一の理由は、生活様式が洋式になり、食事は座卓ではなくテーブル、畳敷きの座敷はフローリング貼りのリビングになり、座卓や座布団は椅子やソファになったのです。そして掘り炬燵はエアコンや床暖房にとって変わられました。
二番目の理由は、和室を作るには、手間暇とお金がかかることでしょうか。そして三番目の理由は和室を作れる職人が居なくなったこと、そして四番目の理由として、今住宅業界を席捲しているハウスメーカーやマンションディベロッパーや分譲住宅販売会社としては、和室などという時代錯誤で訳の分からないものを作っても意味がないし、何といっても量産には向かない、ということでしょうか?つまり手間が掛かって儲からないものは誰もやらないとなったのです。又、設計士やインテリアデザイナーと言われる人達も、和室を設計したり、ディティールに没頭するような知識も意欲も持ち合わせていない、ということでしょうか?私自身も、世の中全てがAIに全てが支配されかかっていて、お掃除ロボットが駆けずり回っている現代の家に、いきなり和室で生活させようなんて野暮なことを言っている訳ではありません。
日本が何百年もかけて作ってきた数寄屋建築や侘・寂の原点である茶室という日本文化を根絶させてもいいのか、という思いなのです。
私が昨年、自然素材木材を使った「大人のリノベーション」と称するショールームを作ってから、たくさんの人に見ていただきました。大体の人は空気感の違いを感じ、落ち着く、気持ち良いと言っていただいたのです。そしてそのショールームの一番奥に、千利休の「待庵」ならぬ2帖の和室を作ったのですが、そんな狭い和室であるにも関わらず、圧倒的な存在感と癒しの表情を醸し出してくれたのです。そして、年代に関係なく老若男女の普通の人達のほとんどから評価して頂いたのです。ならば殺伐とした日本及び日本の住宅の中に何らかの形で和室を残していければいいなと素直に思ったのです。
私は建築設計の修業時代に吉田五十八という和風建築の大家のところで一時仕事をさせていただいたことがあり、その時に培った実施設計や施工図の体験が少しありましたので、今までの私の作った住宅の中には、1部屋だけでも和室を取り入れたり、洋室の中でも障子とか格子戸とかを採用したりしてきましたので、件の建築関係の人達よりも和室に関する知識や愛情が深いと思っているのです。外国人の有名な建築家であるフランク・ロイド・ライトやアルヴァ・アールト、桂離宮を世界に知らしめたブルーノタウト等は、日本建築に興味を持ち、自らの作品の一部にその和風テイストのデザインを取り入れています。
第一次世界大戦前の1930年代にもフランスを中心にジャポニズムの一大ブームがありました。絵画の世界での浮世絵が印象派に大きな影響を与えたことがありました。その時には和風建築や俳句までもが日本文化の一つとして人気があったようで、むしろ外国人の方が私たち日本人より日本の文化を愛する気持ちは強いのではないか、と思える程です。
私は何も演歌歌手北島三郎の歌の世界のようなコテコテの和室を復権させようという気持ちは全くありませんが、日本の現代住宅がどんどん失ってきた和風建築の良さを見つめ直して、ただ外界から人間を守るだけの味気ないシェルターのようになってきた住宅、あるいは高気密高断熱とまるで温室のようになってきて、結露やカビが発生した新建材だらけの家で果たして良いのかという問いかけをしていきたいという、気持ちの表れが、和室のすすめだったのです。
恐らく、今のハウスメーカーや建売住宅が作っている洋室と称する部屋と例えば昔の茶人が作った茶室との大きな違いは、その様式やその空間が与える精神的意味までを含めると、1000倍とか10000倍位の価値の差があるのではないかとさえ思えるのです。
紙の障子を開けると、庭が飛び込んでくる。天井は庭が飛び込んでくる天井は屋根を支える力強い丸太梁を現した
書院:和室
屋根の傾斜を利用した天井
わらの屋根の玄関門
腰壁は板貼壁はしっくい壁
格子戸を付けた玄関
茶室入口:茶室入口としてのにじり口
皮木の床柱
和室から庭を見る
障子を開けると室内と和風庭園が一体化する
応接室:飾り棚が付いた客間
畳敷きのめずらしい縁側
網代天井を貼った木の廊下
座敷に掘られた囲炉裏
図面1
図面2
襖:部屋の間は襖で仕切る。
客間:かなり凝った書院
畳の部屋の奥に上段の間がある。
床の間:両脇に飾り棚がある床の間
部屋のつながり部分に変則的な床の間
丸窓の付いた書院
応接室:和洋折衷の応接間
縁側があり、つくばいが見える
ダイナミックな石畳と草花の競演が見事
奥座敷付書院:花頭窓のある部屋
東屋:床は土間になっていて土足で利用できる
東屋:屋根は藁ぶき屋根で変形屋根
図面
お電話でのお問合せ
0120-5000-25
24時間365日受付