建物を変更して再利用すること

「コンバージョン」とは転換という意味ですが、建築用語で「コンバージョン建築」とは、それまでの用途から変更し再利用することを指します。「リノベーション」のように建物を修理、修繕をすれば長く利用できます。和室を洋室にしたり、2DKを1LDKに間取り変更したりすれば、新築のように生まれ変わることは出来ます。しかし、時代に合わなくなった建物をそのまま利用し続けるのは需要が減っていくので経営が困難になります。そんな中で、古い建物を修繕するだけでなく、倉庫をカフェやレストランにしたり、オフィスビルをアパートやマンションにするなど、転用や用途を変えて全く新しい形で再利用することで需要を生み出すのがコンバージョン建築の狙いです。

history

価値ある歴史的建造物を残せる

アメリカ・NYのクッキー工場から商業施設へとコンバージョンした「チェルシーマーケット」

ニューヨークでは今でこそ活発なコンバーションですが、1960年代までは建物を解体して新築する再開発が盛んでした。変化のきっかけは、工場や倉庫が立ち並ぶソーホー地区にアーティストが無許可で住み始め、街にアートギャラリーが増えていったことです。次第に行政も認めざるを得なくなり、今では世界的なアートギャラリーとなりました。
日本では、江戸時代よりも前からある古民家などは文化財指定すれば後世にも繋いでいけるかもしれません。しかし、大正や昭和の古き良き建物を残そうと思っても一般の住宅などでは手段がありません。所有者がメンテナンスをしながら次世代へ繋いでいくのが現状です。しかし、少子化で財産を継ぐ子どものいない家庭も増えてきています。そうなると自宅を売却して老後の資金に充てるなど歴史的な建造物は姿を消していきます。
歴史的な建造物だけでなく、古いアパートや中古の商業ビルでもコンバージョンを利用することで利益を生み出す事業として残していくことができます。既存のものを宝物とするか廃棄物としてしまうかは、私たち人間に委ねられているのです。

value

付加価値をつけることができる

古民家レストランや蔵カフェなどは、その珍しさや落ち着いた雰囲気から人気となっている

リノベーションは現状リフォーム寄りなイメージが強く、修繕をすることで元の建物をより使いやすくするものです。コンバージョンは同じ修繕でも改修というイメージが強くあります。建物自体をこれまでの用途から別の用途に作り変えることで新しい需要を生み出すのです。
文化財でもない限り、古い建物は建て替えを待つのがこれまでの考え方でした。なにもしなければ相続などのタイミングで取り壊される古屋に過ぎません。しかし、コンバージョンを活用して新しい目的で再利用することで、「古さ」を付加価値として経営の助けにする事例も出てきています。
倉庫をカフェにしたり、古民家をレストランに、マンションをオフィスになどそれまで続けてきた業態では経営が振るわなくなってきた物件に対して、別のアプローチをすることで地域のニーズをすくい上げて経営を立て直すことが見込めます。古くても活用できる建物だからこそアイデアで新しい事業を展開することが可能です。

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コンバージョン建築で土地活用をするメリット

経営の立て直しができる

競合他社が増えてきたり、時代のニーズに合わなくなって経営が不振になっている物件でもコンバージョンで用途を変更し、新しい需要を喚起することで経営の立て直しが見込めます。アパートとして長く経営をしてきたが、周辺にマンションなども増えてきて経営が難しくなるケースはよくあります。ベンチャー企業やスタートアップ企業向けのスモールオフィスとしてコンバージョンすることで賃料を上げても入居者が獲得できている事例もあります。相続した古い実家を持て余して固定資産税を毎年払うだけだった物件でもシェアオフィスやレストランにコンバージョンして固定資産税を上回る利益を上げる事例もあります。これまで活用が難しいとされていた物件ほどコンバージョンによるアイデアで経営を立て直す効果が高く得られるメリットがあります。

新しく建物を建てるより費用が安い

新しい建物を建てるとなると小さなアパートでも数千万円からの資金が必要になります。一方でコンバージョンを利用するならリノベーション同様に、既存の建物を活用できるので、工事費用が安く済みます。初期費用が低く抑えられれば、借り入れるローンも少なく済み、事業を開始した後の返済額も抑えられるので経営において資金繰りが楽にもなります。キャッシュフローが良ければ経営で失敗するリスクも抑えられるので長く事業を続けられる可能性が高まります。

工事期間も短くて済む

コンバージョン建築のメリットとしては工期が短く済むのもメリットの一つです。アパート建築なら4カ月から5カ月程度、マンション建築となると1年程度は事業を始めるまでかかります。その間は事業ができないので収入はありません。コンバージョンであれば既存の建物を利用するので、基本的には工期が短く事業を開始できます。

空き家対策ができる

拡大する空家問題に対して2014年に空家等対策の推進に関する特別措置法が施行されました。空き家を放置しておくと管轄する行政機関から指導を受けて、適切な管理をすることが必要になったのです。行政からの指導や命令に従わない場合には、特定空き家に指定する措置がとられます。特定空き家に指定されてしまうと、住居として減免されていた固定資産税の特例措置が外され、税額は6倍程度に膨れ上がります。活用できないからと放置していた空き家でもコンバージョンによってレストランやシェアオフィスなどに用途変更することで、指定を回避するだけでなく、資産として収入を得られるようになる事例もたくさんでてきています。


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コンバージョン建築で土地活用をするデメリット

耐震性や耐久性が劣る

コンバージョンの対象となる建物は基本的に古い物件が多くなります。蔵や古民家などさまざまな災害を乗り越えてきた建物はある程度の耐震性や耐久性があるとも考えられます。一方で倉庫やオフィスビルなど古い建物の中には耐震性や耐久性が劣っている物件もあります。特に1981年以前に建てられた40年程度経つ物件については旧耐震基準で建築されているので耐震基準を満たしているかどうか確認する必要があります。新耐震基準を満たしていないと固定資産税の税率が上がるだけでなく、利用者への安心面でも不安が残ります。また、古い建物を利用する場合には、定期的な修繕が必要になり、物件によっては経営の負担になる場合もあります。物件がどれくらい利用でき、ランニングコストがどれくらいかかるのかは事前によく調査したうえで計画を立てましょう。

自由度が低い

コンバージョン建築は元の古い建物を有効活用するメリットがある一方で、既存の建築に改装内容が左右されるデメリットもあります。リノベーションでも同様ですが、新築で建てるよりも自由度は低い施工内容になりがちです。新築なら水回りや配管等を自由に配置して理想の建物を建てることができます。コンバージョンする建築物が汎用性の高い構造であればある程度自由度は高くなりますが、蔵などの出来上がった建物をコンバージョンする場合には工夫が必要です。コンバージョンする場合にはアイデアも必要になってくるので、実績のある土地活用業者に相談して活用方法を引き出すのが良いでしょう。


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日本で有名なコンバーション建築「横浜赤レンガ倉庫」

「近代化産業遺産」に認定された、横浜赤レンガ倉庫

赤レンガ倉庫が竣工されたのは1911年。日本最初の荷物用エレベーターや消火水栓、防火扉などを備えた、日本が世界に誇る最新鋭の倉庫として2つの倉庫が完成しました。1923年の関東大震災では大きな被害を受けたり、第二次世界大戦では海外との貿易が途絶え10年間に渡りアメリカ軍に接収されたりと稼働できない時期もありました。
そんな中で、倉庫としての役割が低下し、建物の解体等も想定される中、横浜市は1983年に「みなとみらい21」事業に着手しました。新港地区は赤レンガ倉庫を中心として歴史と景観を活かした街づくりが進められることとなったのです。1989年倉庫としての役割を終えた赤レンガ倉庫は、保存のための改修工事が始まり、2002年文化・商業施設としてコンバージョンされました。2007年には「近代化産業遺産」に認定され、建設して100年以上経った今も多くの来場者を楽しませています。

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当社実例:築43年の飲食店ビルを2世帯住宅付き複合ビルへとコンバージョン

(左)既存ビル外観 (右)完成後ビル外観

しばらく廃墟ビルのようになっていましたので、これをどう再生させるかはとても困難な作業の積み重ねが必要でした。テラスや屋上には苔が生え、天井は落ち、外壁には大型のダクトが取り付けられていました。
面積は約140坪あり、普通の家の5件分の広さです。駅徒歩5分と近く、近隣には3つの大きな公園もあり、住居環境としては最高の立地です。
当社ではこの飲食店ビルを、複合ビルに”コンバーション”しました。1、2階はテナントとして他人に賃貸して収益をあげることも出来るし、自分たちの小商いのスペースにも出来ます。地階のスペースは有事の際の「地下シェルター」、又「非常用倉庫」のプランにしました。3階と4階は2LDKと1LDKの2世帯住宅にして、外階段と内階段で繋げました。
複雑で大掛かりな8か月のリノベーションでした。

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