建築用語集
■撥水
水をはじくということ。基本としては、加工して素材が吸収せずに水をはじくようにする。水がしみないようにすることによって、カビを防止したり、腐食を止めたりする効果をもたらす。アパレルなどで生地に加工することが撥水と考えられがちだが、コンクリートなどに対しても行なうことができる。撥水させることによって、雨水の浸透を防ぐだけではなく、汚れもつかないようにすることが可能だ。特にコンクリートやモルタルの打ちっぱなしの場合、表面を撥水させることによって、内部の鉄筋腐食を抑制し、中性化も防ぐことができるため、耐久力が低下しにくくなる。また、撥水により塩害劣化や凍結融解による劣化も防ぐことができる。
■撥水汚染
シリコンコーキングを行なったときに、のちに目地まわりが黒く見えるようになってしまうこと。シリコンコーキングは、基本的に塗装が乗らない。それほどの撥水性を持っているが、時間とともに、この撥水性分が雨などで広がってしまい、15cm程度の範囲まで影響を及ぼす。これが、撥水汚染であり、汚れてしまう原因となる。汚れてしまうだけではなく、撥水成分が広がってしまっているため、塗装もすることができなくなってしまう。これは、時間がたっても回復したりすることがない。そのため、塗料を変えていかなければならず、低汚染タイプの物は使えなくなる。撥水汚染を防ぐための光触媒系塗料も発売されるようになった。
■ハッチ
跳ね上げ式扉のこと。水平面に取り付けられることが一般的な使用法となる。物を出し入れしたり、人間がもぐったりするために使われることが多い。本来は船の甲板や船室に取り付けられていたような昇降口であり、大きな物ではない。キッチンからダイニングに通じる用のハッチは配膳用の窓口も配膳ハッチと呼ぶことがある。ベランダに取り付けられている場合には、非常口となるように作られている。同時に避難用の設備が整えられており、脱出用のスライダーなどが伸びるように作られている物も。この場合には避難ハッチと呼ばれるが、その性格上、転落したりすることがないようにする必要がある。簡単に開かないように作らなければならないが、脱出のときには素早く開かなければならない。
■鼻隠し
垂木の小口に取り付ける部材のこと。化粧板を使っており、水平に取り付ける。屋根板を支えている垂木の先端部分を隠すために用いられる物で、樋が付く場所に用いる。樋が付かない場合には、鼻隠しではなく破風。そのため、樋を取り付けるための下地材という性質も持っている。化粧板を使わない場合には、紫外線の影響を強く受けることになるため、塗装しなければいけない。木製が基本となる物の、防火ということを考えた場合に不燃材にする必要があり、窯業製品も増えてきた。板金などで打ちつける物やモルタルで塗り固めてしまうという方法も採られる。外壁に合わせていくことになるため、外壁の種類とともに減っていった物もある。
■端切り
木が傷んでいる、あるいは直角でないために、木材の木取りの際に端を切り除くことを言う。木取りは原木丸太から建築材を製材する過程の中で、どのような部材を取るのかを決めて切り出すこと。一般的には 芯持ちの柱、桁、梁などの構造材を取り、その周辺で野地板、垂木などの造作材を取り、残った部分で18mm角のかわら棒を取っていく。丸い原木から角の建築材を取るのだが、極力、廃棄する部分を少なくなるように木の形を見極めながら挽いていくのが特徴。木の曲を読んで用材する必要があり、木取りの仕方で、節がでたりでなかったりする。木取りは木材の値段に大きく影響を与えるため、その際に行なう端切りは大切な工程だ。
■幅木
床面と接する壁の最下部に取り付けられる幅10cm程度の横木で、見切り材のひとつ。傷や汚れが付きやすい壁の下部を保護するためと、壁と床の仕上げ部分のおさまりを美しくするために設けられる。システムキッチンなどの最下部で、「足元」と呼ばれる部分に取り付けられるものも「幅木」と言い、台座の高さに合わせてキャビネット単位に装着されるものと、長尺型として複数のキャビネットにわたって取り付けられるものがある。「台輪前板」と呼ばれることもある。
■巾止め筋
配筋する場合に、幅を一定に保つために使われる鉄筋のこと。鉄筋はダブルで組むときに、その幅が狂ってしまうということが出てくる。これを正確に保つとともに、補強することもかねて使われる。配筋した鉄筋が接近してしまうと、そもそもダブルに組んだ意味がなくなっていく。鉄筋が移動すれば、型枠に近づくことも増え、かぶりを失ってしまうこともあるため、重要な意味を持つ。ダブルにする場合には、梁などに使われることになるが、両側の腹筋に対して上にかぶせるようにしていく。幅止め筋と明記することも多い。補助として使っていく物で、幅を維持すれば目的を達することができることから、中心となる鉄筋よりも細い物が使われていく。
■ハビテーション
居住・住まいを表す。マンションや団地名などに用いる。
■破風(ハフ)
屋根の妻側造形のこと。切妻造りにした場合には、必然的に作らなければならない。切妻側には、必ず三角形の外壁ができるが、この部分が相当することから、切り妻側にしか存在しない。棟に対してみた場合には、直角に接する外壁となってくる。玄関ということで考えると、切妻側に設けることが多くなってくるため、破風は大きなアクセントに。防火地域では、破風に木製を用いることはできなくなってしまう。そこで、窯業系の物が使われることもあるが、モルタルを使ったり、金属で囲ってしまったりするなどの方法も採ることができる。破風板が出会う部分の頂点は、拝みと呼ばれることが多い。乾燥とともに拝みに隙間が開くことがあるため、考慮して取り付けることが求められる。
■羽目板
壁に小幅板を張って仕上げること。1枚のことではなく、連続して張った仕上げのことをさす。小幅板のことも羽目板と呼ぶことがある。外側だけに用いられるものではなく、内壁にも用いられることも。使い方としては、横に張る横羽目の使い方がもっとも多く見られる。他にもドイツ下見板張りや南京下見板張りといった方法があり、同じ小幅板を使っても、異なる点が多い。縁下見板張りといった方法もある。横に張るだけではなく、板を縦に持ってくる縦羽目と呼ばれる方法もあるが、この場合には、板の幅が横よりも狭くなっていく。この方法には本実張りや合決り張りと呼ばれているものがある。重ね張りになるため、釘は見えなくなる。
■はめ殺し
窓や建具などの取り付けの際に、開閉ができないように固定して取り付ける形式のこと。建具など、本来は開閉できる物が、固定されている場合に言う。窓の場合、サッシ枠などの余計な線が見えないため、外の景色を楽しむには最適な窓と言えるが、主に採光の目的で用いられることが多い。通風の機能は持たないため、通風用の窓を別に取り付ける必要がある。ピクチャーウィンドウやフィックス窓など、様々な呼び名があり、細長い形状の物はスリット窓と呼ばれることも。建具表には開閉方法を記すが、そのときには「FIX」とか「Fix」と書かれることが多い。これは英語の「Fixed 」の略で「固定する」という意味がある。
■はめ殺し窓
窓枠にガラスがはめ込まれた開閉ができない窓のこと。主に、採光や外の景色を楽しむことを目的にして設けられる窓である。「フィックス窓」、「ピクチャーウィンドウ」など、様々な呼び名があり、細長い形状の「はめ殺し窓」は特に「スリット窓」とも呼ばれる。メリットとしては、建物内外からのデザイン性の向上や、隙間がなく強度もあるため破損や漏水の恐れが少ないということ。一方、開閉できないために掃除が行き届かない、室内の断熱効率が下がるなどのデメリットがある。また、「はめ殺し窓」のサイズとガラスの強度によっては台風や暴風雨時に飛んできた木片や石、瓦などによってガラスが割れる可能性もあるので、戸建住宅を建設する際には、その地域の気候特性を調査した上で、設置を決定することが望ましい。
■腹筋(ハラキン)
主筋に対して平行の位置を取るように配筋される鉄筋のこと。鉄筋コンクリート造りの梁に使われる。梁の背を見たときに、60cm以上になる場合には変形を防止するための鉄筋が必要だ。主筋は梁に対して並行に配筋していくことになるが、その上下に腹筋を配置していくことになる。主筋から見たときには、中間的なものとなっていく。主筋に対して直行することになるが、肋筋が変形してしまうことを防止することもできる。振れ止めやはらみ止めといったことも目的となるため、配筋として考えた場合、重要な意味を持つ。主筋を補助する役目となってくるため、重量的な問題もあり、主筋の太さに対して細い鉄筋を用いていくことになる。
■梁
建物の建設時に使用する構造材のこと。柱の上に棟木と垂直する方向に渡した部材で、上からの荷重を支える。棟木と垂直する梁に対して、棟木と並行する部材は桁と呼ばれる。「梁」に用いられる樹種には松や杉が多く、かつては曲がった松の丸太が使われ、その弓を張ったような形状から「張り」と呼ばれたが、後代になって「梁」という字が充てられたと言われている。「梁」は建物の様々な部位に使われており、それだけに固有の名称が数多く存在する。例えば、柱と柱で支えられる「梁」は大梁、大梁に支えられている「梁」は小梁、屋根を支える「梁」は小屋梁で、床を支える「梁」は床梁である。小屋梁のうち、もっとも外側にある「梁」は、妻側にあることから妻梁と言う。
■梁形
天井のふところ寸法に比べて梁の形成が大きくなっている状態のこと。天井面からはみ出している梁の部分を指す。梁そのもののかたちのことも梁形と呼ぶ。屋根や床の荷重を柱に伝える大事な部分であって、圧縮や引っ張り、曲げ、剪断に耐えていかなければいけない。そのため、大きく作ることは、どの点を取ってもメリットがある。ただし、重量が重くなることになるため、重心が上昇することになる。もうひとつ、室内空間から梁形が見えることで、床よりも天井の面積が狭くなり、空間が狭く見えてしまうことに。天井部分にあることから、隠すことは難しくなってしまうため、あえて隠さずにさらに大きな収納スペースを作り、一体化させるといった方法もある。
■梁成
梁の上端から下端までの寸法で高さのことで、幅は梁幅と呼ぶ。寸法的には、いったいどんな材質を使っているのか、梁間であるスパンによって決まってくる。梁は上部から力がかかってくることになる。そのため、梁の高さである梁成によって、曲げや剪断に耐えられるかが決まるため重要な要素だ。梁の高さということになるため、梁の背という言葉も考えられるが、実際に使われることはあまりない。梁の背の高さということで丈もセイと読むが、これも当てられることはない。図面上はdepthであるDを使うことから深さを意味する言葉が使われるが、これが成になったと言われる説もある。寸法を表記する場合にはb×D=300×650といった表記になるが、これは梁幅×梁成という意味を表す。
■梁伏図
上方から見下ろすように梁の状態を描いた図面のこと。縮尺は1/100程度になることが一般的。真上から見下ろした図面のことを伏図と呼ぶことが多いが、梁伏図の場合には、梁の状態を書き表しており、軸組の様子がすぐに分かるように作られている。伏図ということでは、他にも基礎伏図や床伏図もあるが、どれも上方から見下ろしている図面であり、位置がはっきりと分かるようになっているのが特徴だ。梁伏図には、単純に梁としてだけではなく、地面の中に設置することになる地中梁や基礎梁といった物も描かれることとなる。プレカット工法が進化して浸透していったことにより、梁伏図を使うよりも施工図を利用することが多くなった。
■ハロゲン化物消火設備
ガス系消火設備のひとつで、ハロゲンを使った消火剤を持つ設備のこと。不活性ガス消火設備と同様の設備対象物や構成物を持っている。消化の原理は、燃焼しているときの連鎖反応を抑制する負触媒効果によるもの。オゾン層を破壊しないような配慮が2001年からされるようになった。航空機搭載用として開発された経緯を持っており、単位容積当たりの消火力が高い。そのため、少ないスペースで高い効果を発揮させることが可能だ。油火災にも対応できるだけではなく、耐電性を持ち耐金属腐食性も大きいことから、電気機器などにも使用することができる。ハロゲン化物消火設備の場合、揮発性も高く汚損も残しにくい。
■ハロゲンランプ
電球の一種でハロゲンバルブとも呼ばれている物のこと。白熱電球に近い物であり、電球の内部に不活性ガスを封入している。このガスの他に、ヨウ素や臭素などを使っており、これらがハロゲン元素であることから、ハロゲンランプと呼ぶ。不活性ガスのみを封入する白熱電球に比べて白熱する温度が高いことから、明るさに大きな違いが生まれる。長寿命といったメリットも持っているため、多く利用されるようになった。光源として商業施設のダウンライトなどでも、大光量や長寿命ということが大きなメリットになる。自動車のヘッドライトやフォグランプといったことに使われていき、よく知られるようになった。
■ハンガープラント
室内や窓際などに飾る吊り下げ式の花や観葉植物。
■ハンガーレール
建具をつりさげて開閉させる装置のこと。ドアレールと呼ばれている物もハンガーレールと同じ。引き戸式の建具に必要となる装置で、ベアリングの入ったレールを取り付けることで、ある程度重量のある部材を吊り下げてもスムーズに開閉させることができるようになる。つりさげるだけになるため、床面にはレールが必要ない。バリアフリーと合わせることで、床面に段差を付けることなく利用でき、安全性を高めることができる。また子供たちがつまずいてしまうようなこともない。工場でも多く使われている他、トラックのテントの開閉といったことにも利用されている。下部に滑り止めを付けなければならないこともあるため注意が必要となるケースもある。
■半外付けサッシ
木造軸組工法用の住宅用に作られているアルミサッシや取り付け方法のこと。アルミサッシの取り付け方法には、内付けや外付け、半外付けがあり、対面する柱の内側の中に取り付ける方法が半外付けサッシとなる。約3cm入るのが特徴で、木製サッシ枠を回すことで、内壁を見切るというかたちになっていく。一般的に使われている方法であり、洋室や大壁使用の和室でも使われている。柱の内側に取り付けることになるため、内側には額縁がなければ、おさまりがしっかりとしない。この半外付けサッシを用いる場合、額縁の問題から内障子を設けることができなくなる。内付けは真壁の和室、半付けは在来工法、外付けはツーバイフォー用として考えることができるが、それぞれ断面が異なる点に注意しなければならない。
■ハンチ
強度を高めることを目的とし、鉄筋コンクリート造りの建物で床やスラブ、梁が柱に接する部分を大きくした物のこと。断面を大きくすることによって、端部に働いてくる剪断力や曲げ、モーメントに対して対抗する。背を大きくした場合には垂直ハンチ、幅を大きくした場合には水平ハンチと呼ぶ。ハンチを付けるということは、型枠が複雑化することになる。その分、コンクリートの重点不足による断面欠損が生じたりする可能性も考えていかなければいけない。しかし、他の部分では、梁下の高さを高く取ることができるようになってくるため、広く使うことができる。コンクリートの量も調整できるようになっていくことから、量を減らすことが可能となる。
■バースアイ
鳥瞰図のこと。鳥瞰図とは、鳥が見ているような高いところに視点を置いた透視図のことであり、俯瞰図とも言う。建物が立体的に描かれる。建築の内部の鳥瞰図を作ることによって、内観等を具体的に示すことができる。床や壁、建具などを細かく再現して作ることで、部屋のレイアウトや位置関係、雰囲気を把握するのに役立つ。ソフトウェアの発達によって、3Dのコンピュータグラフィックスで製作されるようになった。建物の雰囲気だけを見たい場合など、厳密な寸法が必要ない場合は、遠近感をデフォルメして描かれたり、注目した対象を強調して描かれたりする場合もある。また、鳥の目のような斑点がある木目のこともバースアイと言う。
■バーチカルブラインド
ブラインドの一種で、布などで造られた細い帯状のスラットと呼ばれる羽を、垂直つまりバーチカルに並べて取り付けられた、左右に開閉するタイプのブラインドのことである。一般的なブラインドと同じように、スラットを回転させることにより日照や視界をコントロールすることが可能。開閉操作が簡単で、スラット式は左右や片側にブラインドを寄せてたたむことができるため、出入りするときに全開にする必要がない。それゆえ、高さのある大きな窓に適している。垂直でまっすぐなラインのためモダンでシャープな印象のある部屋に仕上がる。通常のブラインドは横型、アルミ材が一般的でオフィスでよく用いられるが、「バーチカルブラインド」は布製が多いため家庭の部屋にも合わせやすい。
■バイフォールドドア
「バイフォールドドア」とはクローゼットのドアなどに使われる、折りたたみ式のドアのこと。各ドアの幅は1〜2フィート程度(1フィート=約30cm)で、蝶番で折りたたみできる仕組みである。場所を取らない大きな開口が特徴であり、通常は上端のドア枠に、ガイド・レール(トラック)が付いており、ピボットと呼ばれるガイド・ピンがそこを左右に移動することで、スムースに開閉できる。ドアの下端には何もガイドが付かず、つま先の邪魔にもならないので、床がすっきりした状態になるなどのメリットが多い。その反面、ガイド・レールやピボットなどの金物はドアの開閉によってじょじょに位置がずれたり破損しやすくなったりするので、金物の位置調整や部品交換が必要となる。
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