建築用語集
■焼付け塗装
熱を加えることで乾燥させる塗装方法のこと。150度程度の加熱処理をすることによって定着させる。塗膜の重合反応を利用した方法で、緻密な塗膜層を作り上げることが可能。常温よりも光沢感が強く、塗装面も滑らかに仕上がる。密着度が高く、下地からはがれにくい。塗料ごとに温度や時間が異なり、どちらが不足しても仕上がりに問題が出てくるようになる。逆に長くなりすぎたり、温度が高くなってしまうと、つやがなくなったりするという問題も抱える。建築では部材の大きさが問題となってくることから、細かな部材ごとで行なわれることはあるが、全体的に処理することが難しいこともあって焼き付け塗装するような物は少ない。
■役物
規格品の中で、定尺品など基本形以外の形をした部材。特殊な形状の物であり、端部やコーナーなど定尺品のような物では納めることができない場合に用いられる。タイルなどではL字型の物があり、コーナーに使われている。コンクリートブロックでは、隅に置かれるような物のことを役物ということが多い。タイルといった部材だけではなく、型枠などで定尺の物では収まらないようなときには、役物を作り対応する必要がある。役物は、特殊な場面や納まりのために使われる物であり、全体から見ると数はそこまで必要になってはこない。その代りに、使用する場面ごとに必要な物が変わってくるため、適材適所で選択していく必要がある。
■櫓(ヤグラ)
矢を納める倉だった物が、武器庫になっていった物のこと。平安時代に始まった物であり、屋敷の防御のために門の上に置かれた。床を張っておき弓を打つための場所とすることで、偵察と防御の両面で使えるようにした。そのため、木材を高く積み上げる必要が出てきて、現在でもみることができる櫓のような形に進化していくことになる。城郭でも作られるようになり、やがて防御陣地の意味合いが強くなり、目的に応じて様々な名称も与えられるようになった。こうした呼び名の変遷が民家の施設にも影響を与えるようになり、土間の煙だしのための物なども炉と呼ばれることがあり、芝居小屋の太鼓櫓といったかたちにもつながるようになっていく。
■ヤニ筋
ヤニが詰まっている部分のこと。脂壺やヤニ壺と呼ばれることもある。ヤニは高い粘度で出てくる樹脂であり、樹木の種類によっては、かなりべたつく。特に多く出てくるのは松であり、溜まっている部分が多くある。この部分をヤニ筋と呼ぶ。製材後にヤニが出てくることになるが、溜まっている量がすべてなくなるまでで続ける、特に夏のように気温が上がってくると自然に流れて滴ることも出てくる。冬の温度が下がった時期は、乾燥してくることで白っぽく変化することも。ヤニ筋がある場合には、その上から塗装したとしても押し出されてしまうといったことが起きるため、塗装する前にヤニ止め処理をすることが必要で、シーラーなどを塗布する。
■屋根形状
屋根の形のこと。入母屋屋根、切妻屋根、寄棟屋根、片流れ屋根、陸屋根、腰折れ屋根、かまぼこ屋根、招き屋根、方行屋根、ドーム型などがある。一般的な屋根形状のひとつである「切妻屋根」は三角の形になっており、和風、洋風双方に合う屋根だ。「寄棟屋根」も一般的な屋根形状で、世界中で見られる。「片流れ屋根」は名前の通り傾きが片方にしかなく、シンプルな構造でモダンな仕上がりとなる。南向きに傾斜すると太陽光発電パネルを最大限に設置することも可能。「陸屋根」は重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造で使用され、キューブ型の外観となり、屋上の利用がしやすい。この他、和風、洋風、モダンで個性的な様々な屋根形状が存在する。
■屋根勾配
屋根の傾斜の度合いだ。屋根の勾配は角度で表わすか、あるいは水平距離10に対しての高さを取って3/10や、また3寸勾配などと表現する。屋根の勾配は、建物の外観、梁間の大きさ、用途また屋根瓦の材料の形状や種類、性質、寸法、そして土地の雨量、積雪量や風速などの気象条件によって決定。雨水をできるだけ早く建物の外に排出することが、雨漏りを起こさないことになるので、葺(ふき)屋根には長年の経験から適切な勾配が、屋根葺材料の種類に応じて標準化されている。例えば、粘土がわらぶきの場合の勾配は4/10から4.5/10、亜鉛鉄板ぶきの場合は3/10程度だ。このように、雨漏りを防ぐため屋根の仕上げ材により必要最低勾配が決まってくる。
■屋根伏図
建物の設計を平面図として記した「伏図」の中で、特に屋根の造りを記した図のこと。建物を真上から見下ろした状態の屋根や形や仕上げなどを、屋根面の平面図のように仕上げた図面となっている。屋根の外形平面図で、屋根の形状、勾配、材料などが記入されている。屋根伏図は、縮尺1/100が多い。工事請負契約において、工事請負契約書の他に、建築業者から建築主に提出される書類で、建築工事に必要な図面と仕様書の書類のことである、設計図書に含まれる書類である。屋根伏図を見るときに注意すべきなのは、屋根の水が流れる向きを雨といの場所だ。簡単な形の屋根は、外壁から屋根が飛び出している部分である軒の出が多い方が、壁材の傷みや汚れが少なくなる。伏図の中にはその他に、床伏図、基礎伏図などがある。
■山形プレート
建築で用いられる補強のための板のこと。様々なプレートが使われる中で、V字型になっている物を山形プレートやVPプレートと呼ぶ。構造金物としてV字型になっていることで、柱や横架材の接合部に用いることができ、これによって、引き抜きの力に対抗させる。取付方向に決まりが存在し、開いているほうを横架材に取り付ける。接合面を表すラインと矢印が付けられており、取り付け位置が明確に。柱の背割り面に取り付ける場合には、逆にして付けることもでき、材が割れてしまうことを防ぐ。釘にも指定が存在し、他の物を使ってはならない。安価で使用することができる物であり、通常は釘もセットになっている。
■大和絵
日本絵画の概念のひとつで、中国の唐絵に対して使われるようになった言葉のことで、平安時代に発達していった。典型的な物としては源氏物語絵巻などがある。諸派ができあがる物の近代の日本画にも影響を与え続けてきた。伝統技法でありながらも中国の水墨画なども取り入れることで、大和絵を代表とする狩野派は隆盛を極めることとなる。こうしたことからも、大和絵を定義するためには、時代背景を知ることが必要であり、用法も技法も時代によって異なる。特に平安時代から始まった時期は題材ということでの概念が強く、技法としての関連性はほとんどない。様式として完成していくのは、14世紀以降のことであり、この時代以降は伝統的な絵画洋式として定着していくことになる。
■山留め
地盤を掘削する際に、周囲の地盤が崩れないように矢板、堰板などで土を押さえ、その壁を腹起して切梁、親柱などで支持する架構のこと。そして、掘削工事をする際に側面を保護し、周囲地盤の崩壊や土砂の流れを止めるための工事のことを「山留工事」と呼ぶ。掘削が簡単な場合や敷地に余裕がある場合は、山留を設けずに行なう「オープンカット法」が採用されることも。山留工事にはいくつかの種類がある。もっとも一般的なものは「親杭」もしくは「横矢板工法」というもので、地中にH型鋼を埋め込んで人力で横矢板をはめ込む方法だ。「シートパイル工法」もしくは「鋼矢板工法」という山留工事もあるが、これは、コの字型の鉄製の板を地中に埋め込み、ストッパーにして土砂を食い止める方法である。
■ヤング係数
材料の変形しにくさを表している係数のこと。大きくなればなるほど、材は変形しにくいことを示す。弾性率ということを意味しており、どれだけひずみに対して応力が必要なのかということを定めることができる。使う材によって単位が異なり、ヤング係数にも違いがある。弾性の限度内ということで考えると、応力に対してひずみというものは、一定の比率を持っているということが重要だ。同軸方向のひずみと応力は比例定数であるということに。ヤング係数の名称は、イギリスの物理学者であったトマス・ヤングに由来する。トマス・ヤングは弾性体力学だけではなく、エネルギーという用語を始めて用い、概念として導入したことでも知られている。
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