建築用語集
■通気管
排水管やトラップを水が通過する際に、スムーズに流すことができるようにするために設置された管のこと。排水管と外気を連結し、発生してしまう管内気圧を調整するために設置。これにより、排水を円滑にすることができることから、なくてはならない設備と言える。便器を見た場合、トラップに水が吸い込まれるときすべて吸い込まれると、衛生的な問題が出る、逆にプラス圧になったときには、水が吹きあがってしまうことも考えられる。こうした現象を防止するという目的を考えても、管内気圧を調整することができる通気管は重要な意味を持つ。ただし、臭気が出ることになるため、外壁や屋上で開放されることが一般的となる。
■束
上下の階をつないだりする柱ほどの長さは持たない、垂直部材のこと。太さとしてみても、柱よりは一回り細い物が選ばれる。部材を支えたりつないだりするために用いられるが、どこに使うかによって名称は異なってくる。母屋を支える物は小屋束と呼ばれる一方で、床下に使われる物は床束と呼ぶ。非常に多くの場所で使われているため、真束やエビ束など多くの呼び名が存在。鴨居が長材となってしまうような場合には、重力的に支えるのではなく、垂れてしまうことを防ぐために吊り束が使われる。重要な部材となってくることから、木製ではなくプラスチック製や、鋼鉄製の物が利用されるようになってきた。
■束石ブロック
床束を受けるために使われているブロックのこと。一定間隔で設置するが、床にかかっている力を地盤に伝えるために設けられる。自然石を用いることが多かったが、精度や強度の面から束石ブロックが使われるようになってきた。床束は、そのまま基礎や地面に置いてしまった場合、水分を吸い上げることになる。これが腐食の原因となり、建物の寿命を下げてしまうことに。そのため、束石ブロックは重要な意味を持つ。ほぞ穴が開いただけの物もあるが、羽付きと呼ばれている短冊金物が埋め込まれている束石ブロックもある。ほぞ穴があけられている物は、薄いが溜まってしまうこともあり、床束を腐らせることも出てくる。
■突板
天然木を0.2〜3.0mmの厚さにスライスした、表面仕上げ用の板のことであり、「錬板」とも言う。合板の表面に接着して用いるため、むく板の木目の美しさを生かしたまま、ねじれ、反りなどの問題がないため、希少性の高い美しい木目を持った高級銘木などが良く使われ、グレードが高く見栄えが良い。そのため、「銘木単板(めいぼくたんぱん)」とも呼ぶ。合板の表面などに使われ、突板を表面に使用した合板は「天然木化粧合板」と言われる。単層無垢材を使用した場合、使い込むほど風合いが増すが、反りやすく、原木の樹齢が高いほど木材の価格も高価。それと比べ、突板ならば、天然木の良さを生かしたまま、反りがほとんどないという合板の利点が活用できる便利な木材となっている。
■突付け
2つの材を加工したりすることなくつなぐこと。芋繋ぎと呼ばれることもある。単純なつなぎ方で、もっとも早い方法になるが、接続方法としては力が弱く、ずれやすく外れやすい。その結果として、きれいな仕上がりにはなりにくくなってしまう。突付けする場合には、釘や接着剤を使わなければつなぐことができない。接続する力を材の加工以外に頼らなければいけないことが大きな問題だ。木材以外でも使われることが多く、目地や見切材といった物を設けずに突き合わせる場合には、突付けと呼ぶ。素早くつなぐことはできるが、仕上がりまで考えれば、加工したほうが早かったということが起きる。現場では、もっと単純にドンづけすると呼ばれることもある。
■蹲踞(ツクバイ)
茶室のある日本庭園に置かれている手水鉢のこと。石を削って作られていることが多く、低めに作られている。手を清めるように置かれている物だが、低く作られているのは、どんな身分が高い者であっても身を低くしなければ使えなくしているため。ここから先は茶室であり、身分の高低は関係がないという意味を持つ。結界として使われてきたのも、蹲踞が境界線となり茶室という特別な空間に向かうということを意識させるためにある。蹲踞は、手水鉢だけではなく、前石や手燭石といった物をそろえることで、初めて認められることから、単独では使われない。海外では、手水鉢を庭に置くだけでも日本庭園を演出できるとして使われることがある。
■付鴨居(ツケガモイ)
鴨居に似せた化粧材のこと。鴨居と同じ高さに付ける材になるが、開口部がないところに取り付ける。そのため、鴨居とは対になる関係と言える。本来は、襖(ふすま)や障子の上部に取り付けられる横木であり、溝を設けることで開閉という機能を発揮させるために存在するが、付鴨居には存在していない。何もない壁を見ると、非常に殺風景になってしまうことから、鴨居の延長線上として付鴨居を設けることで、アクセントにすることができる。
■付書院
床の間の脇に設けられる書院のこと。平書院と付書院があるが、棚板と明かり取りをするための障子で構成されているのが付書院となる。平書院は、明かり取りに使う障子しかない。棚板を付けることになるため、その分奥行きを取らなければならないため、縁側や外部に張り出すことになる。平書院は、棚板がないため、外側に対して張り出す必要性がないことから多く使われるようになっていった。もともとは、鎌倉時代から室町時代には、貴族や僧侶の住宅に読書用の板張りとして利用されていた出文机が作りつけられていたが、これが時代とともに変化して座敷の装飾に。付書院とは呼ばず出書院と呼ばれるのも、こうした流れがあるからである。
■付け柱
構造的に必要な物ではなく、装飾的に取り付けられる柱のこと。壁面に取り付けることで、柱のように見せる。片蓋柱とも呼ぶ。真壁が多くなると、こうした装飾は必要がなかったが、ツーバイフォーなど大壁構造が増えてきたことで、和室を作るときなどに付け柱が使われるようになった。似たような物として半柱があるが、こちらは付け柱とは異なり、構造耐力を少しだけ負担する。収まりや装飾のためにしか利用されないが、コンクリート造りなどでは和室や古民家といった雰囲気も出すことができるようになる。そのため、古材が利用されることも多い。ヨーロッパの古典様式でも良く見られる物であり、装飾的にも重要な意味を持つ。
■角柄(ツノガラ)
地二材を組み合わせるときに、片方を伸ばして取り付けるときの長い材のほうのこと。和風造作の仕口のひとつであり、窓や出入り口といった開口部の枠で行なわれる。一方が長くなることから、角が出ているように突き出ることとなる。出幅は見つけ幅をもととして、1.2倍から1.5倍。開口部の枠は、一般的に留が行なわれるが、角柄にすることによって、強いアクセントを作ることが可能に。縦の材を伸ばすことだけではなく、横に伸ばすことも角柄と呼ぶ。土蔵壁の壁面にも活用されることがあり、古い商家などで見ることができる。意匠的な意味で用いられているのではなく、隅からひび割れが伸びたりしないように用いられている。
■坪(ツボ)
尺貫法による面積の単位である。1坪は畳2枚分の広さであると言われ、一般的には坪単位で土地や住宅の広さを表現することも少なくない。しかし、「不動産の表示に関する公正競争規約」により不動産登記の他、取引や証明では使用されない単位である。明治時代に「度量衡」が統一され、曲尺を基準にし、1メートルの33分の10を1尺ことが定めらた。これに伴い、面積の表記が平方メートルで統一され、1坪は400/121平方メートルと定義された。ただし、割り切ることがでないため、近似値として1坪は3.3平方メートルとして扱われる。その結果、実用上の誤差が生じ、融資や税制上の優遇措置などでトラブルの原因となることも少なくない。
■坪庭
塀や垣根で囲まれた、あまり大きくない庭のことを指す。建物と建物との間や敷地の一部にある。採光や通風、鑑賞や癒しを目的として造られる空間で、「京町家」に設けられた庭が起源だと言われている。間口が狭く奥行きの深い、独特の形をした敷地で採光や通風を確保するための空間が、徐々に趣向を凝らした坪庭の文化を形成していった。中庭や玄関脇のスペースを垣根などで囲い、草花や木、竹、飛び石や灯篭などのオブジェを配置するのが一般的であるが、最近では、レンガや枕木などを使って洋風テイストを取り入れたものなど、個性的な坪庭も登場。また、浴室の窓越しや玄関ホールの奥など設置する場所も多様になっている。
■妻入り(ツマイリ)
切妻屋根、入母屋屋根の建物で、建物の入り口を棟木と直角の面である妻側に設けている場合を言う。切妻屋根や入母屋屋根では、その妻側に入り口がある。棟が街路を直角に通されているため、街路側に三角の破風が見える形に。また、豪雪地帯などでは、屋根の雪が出入り口に落ちないようにする屋根形式を指す。妻入り型の町家は、西日本においては芽葺き屋根の形式が残った物で、東日本においては積雪の処理のためだったと考えられている。棟木と平行の面を「平(ひら)」と言い、平の入り口のある平入りに相対する言葉だ。一般的に、平入りが多く、妻入りは少ない。神社建築で、住吉造、大社造、春日造は妻入りとなっている。民家でも妻入りの物もある。
■妻換気(ツマカンキ)
妻側に換気口を設けた形のこと。温度の上昇とともに小屋裏に溜まってしまう熱気を排気するシステムで、同時に湿気も逃がすことが可能。切妻屋根に用いられる方法で、外壁に2カ所以上設けることになる。天井面の1/300以上の換気口を設ける必要がある。妻換気を用いていくことによって、外断熱や屋根断熱のように断熱材を入れなければならない。空気の循環を促すことによって、省エネに一役買うという意味でも妻換気は重要だ。熱した空気と湿気を妻換気から排出し、床下の換気口を設けて冷たい空気を取り込むことができる。冬には床下の換気口を閉じれば、空気の流れを遮断することで暖房効率を上げられる。
■妻側
屋根を見たときに、屋根勾配を横から見て三角になっている部分のこと。横から見たときに棟に対して直角に接している。妻側に対して、並行になっている部分は平側と呼ぶ。妻側に渡されている梁は妻梁と呼び、壁のことは妻壁と呼んで区別しているが、これだけでどの方向にある梁なのか壁なのかが分かる。もともと日本建築では、長手方向を正面とすることが多かった。そこで、短手方向のことを、区別するためにも端を意味する妻の側と呼んでいたことがつながっている。切妻造の場合、妻側が妻入りと呼ばれる正面となるが、両端の三角形になっている壁面のことを呼ぶ。配偶者の妻という呼び名は、家屋の中でもつまやで生活していたことに由来する。
■吊木(ツリギ)
上方から吊って支える部材のこと。天井をつるすために用いられるが、棚を吊ることもある。吊木に用いられるのは細長い材であり、これ自体が大きな重量にならないようにしている。もともとは木材が用いられていたが、現在は商品も様々だ。建築基準法では、1㎡当たり1本以上用いなければならない。吊り天井にすることになるが、上階の振動を受けてしまうことになる。耐震上の問題も指摘されるようになったことから、防振吊木といった物も開発されるようになった。取り付け施工後でも高さの調節が可能であり、FRP製のため吊木自体が軽量化されている。防振ゴムが取り付けられているため振動を吸収する他、防音対策ということでも効果を上げることができる。
■釣床
簡易的な床の間のこと。壁床とも呼ばれる方法だ。天井から落掛けを入れて小壁を設ける。床柱も床框もなく、下は座敷の畳のままになる。特別に何かを設けたりすることはない。吊床とも書くが、落掛けが釣り下がったような形に見えることから釣床と呼ばれるようになった。床は何も加工しない方法となるため、床の間に場所を取られたりすることなく、座敷として広く使うことができる。寝具としてのハンモックも釣床と呼ぶ。布や網の両端をまとめて、柱や壁に掛けて吊るす。まとまってしまいやすいため、両端に棒を入れて広くすることもできる。船舶の就寝スペースを効率よく使うためにも使われた。室内用に柱や壁に掛けずに自立できる物もある。
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