建築用語集
■地板(ジイタ)
床の間や床脇の床に板を敷く物。そして床板で畳床に替わって入れる物を言う。この床板となる地板の材料は、主にマツ、ケヤキ、トチ。天然のムク材は最低1年間の自然乾燥が必要である。乾燥中は割れ止めとして、木口と板目部分にボンドや蝋を塗って保護しておく。乾燥後に地板などの用途に応じて木取りし、そりを直したり表面を削ったりして加工することとなる。
■直天井(ジカテンジョウ)
天井処理の仕方のひとつで、上階の床下やスラブに直接天井材を張りつけ仕上げた物のこと。天井材にもいろいろな物があり、吹き付けや塗りといった物も直天井と呼ぶ。直天と呼ぶことのほうが多いが、基本は鉄筋コンクリート造りや鉄骨造りに用いられる。直天井にすることによって、設備配管などが露出するため処理されることが多い。木構造の場合には、どうしても二階根太を使うことになってしまうことから、直天井になることは少なくなる。ただし、剛床にすると対応できる。木構造では手間がかからなそうに見えるが、結果として仕上の仕事が複雑化し、手間数が増えてしまうことになることから高額になることが多い。
■軸組み
柱、梁、筋交い、土台などで構成される骨組みのことを言う。軸組みは、屋根や床の荷重を支えて基礎に伝え、地震や風などの水平力に対抗する役割を持っている。外周軸組みは建物の棟に平行な両側面の軸組みを平と言い、これに直角な両側面を妻と言う。軸組みを通り芯ごとに描いた物を軸組図は、構造図のひとつだ。木造建築物は、各階の張り間及びけた行方向に、それぞれ壁を設け、または筋交いを入れた軸組をつり合いよく配置しなければならないと決められている。階数が2以上、または延べ面積50平方mを超える木造建築物では、軸組みの種類と長さの値から壁量計算を行なって、規定されている数値を基本的には超えていなければならない。
■軸回し
仏間に設ける襖戸のこと。扉を開いた状態で両側にスライドさせて格納できる建具。開いた状態でスライドしていくため、仏壇と干渉することがなく、邪魔になることがない方法と言える。扉角の洋のレールを敷かなければならないため、ある程度の幅も必要となってくる。仏壇を見えなくできる関係上、電源を使う場合には、内部に用意しておかなければいけない。仏間に使われるだけではなく、洋間にも応用されている物が増えている。開き戸ではどうしてもデザイン的なおさまりが悪いときには、軸回しにすることによって、扉は壁の中に収めることができるようになるため、すっきりしたイメージを作り出せる。
■JIS(ジス)
日本工業規格のこと。工業標準化法に基づいた規格であり、日本工業標準調査会の答申によって決定。制定するのは主務大臣であるが、これが工業標準となり、国家標準として使われる。JISを定めることによって、生産者は合理化を進めることができ、技術の向上やコストダウンも可能に。つまり、生産者は利益を出しやすくなるメリットがある。また、消費者側から見ると、標準的な規格を定めることにより、安定した品質と信頼性を得ることができるのだ。認定された工場でなければJISマークの使用は認められない。マークを見ることによって、規格に沿った形で作られていることが認識できるため、容易に判断できる。
■地鎮祭
建物を建てる前に、その土地を使う許可を神から得て、建造物の末永い繁栄や工事の安全などを祈願する神道の儀式を意味する。お祀りする神は、土地の守護神である「大地主神(おおとこぬしのかみ)」と、その地域の神である「産土神(うぶすながみ)」。地鎮祭を行なうには、まず土地の一角に葉の付いた青竹を4本立て注連縄で囲い「斎庭(ゆにわ)」を作る。その中に祭壇を設け、儀式を始める。儀式では「修祓の儀」ですべてを祓い清め、「降神の儀」で神をお迎えする。そして米やお神酒などの「献饌」や神職による「祝詞奏上」、続いて地鎮祭ならではの儀式である、設計者が草を刈ったり、施主が土に鍬を入れたりする「鍬入・苅入の儀」を行なう。その後、工事の安全を祈願する「鎮物の儀」へと移り、土地を鎮めるために鏡や小石、水晶などのお供え物を埋める。最後に工事にかかわる全員が玉串を奉る「玉串奉奠」を行ない、神饌を下げる「撤饌」、そして神をお帰しする「昇神の儀」で儀式を終える。
■地縄
建築における遣方(やりかた)時に、縄やロープなどを用い、建物をはじめ外周や基礎などの位置を地面に示すこと。建物が敷地に対してどのように建てられるかを確かめるための工事だ。建物の角をポイントとして、水糸と呼ばれる蛍光の糸や目立つ糸を張る。地縄位置が建物の芯に張られ、建物が土地のどこに建てられるのかといったことや、境界までの距離を目視できるようになっている。地縄は一般的には施主、営業、現場監督、施工工務店などが行なう。
■地袋
床面に接して設けられた高さの低い袋戸棚のこと。多くは和室の窓下や床脇の下部等に設置され、開閉部は引き違いの小さな襖(ふすま)、上面は木目の美しい板を使用している。収納機能と共に、花瓶等を飾ることができる和の趣を持つアイテムとして活用される。床の間を持つ和室は減少しているが、和室の「地袋」と同じように、下の方に収納スペースが設置されているというケースは多い。つまり出窓の下やキッチンカウンターの下等に設置される収納も、「地袋」の一種として考えることができる。「地袋」は、立ち上がって移動しなくても床やソファに座ったまま物が出し入れできるという利点があるが、カウンター下部等のように場所によっては、逆に出し入れしにくくなるケースもある。
■ジプトーン
トラバーチン模様の洋風天井用化粧石膏ボードのこと。建物の天井に用いられる。ジプトーンという名称は吉野石膏株式会社の化粧石膏ボードの商品名である。比較的安価であるうえに、下地の上に貼るだけというたやすさや、メンテナンス性の高さから、事務所や店舗建築、オフィスなどで広く普及。住宅関連でも物置や倉庫に使われている。へこみ部分に専用のビスを止めるため、ビスが目立たず意匠性も損なわないという点が特徴。現場でのクロス仕上げ、目地処理やと総仕上げが不要で、工数及びかかわる業種が少ないことから、工期の短縮にもつながる。さらに、不燃材料であることから、内装制限を受けないといったメリットも。
■ジャコビアン様式
エリザベス様式に続いてあらわれた、17世紀初頭のイギリスルネサンス期における建築や家具、美術の様式のことを言う。1600年頃から1650年頃の時代に開花したもので、イングランド王・ジェームズ1世のラテン名「ジャコビアン」に由来する。「ジャコビアン様式」はオーク材が用いられることが多い。直線的で重厚感が強く、ねじり棒型や挽物などの脚に特徴がある家具が多く見られる。ウェインスコットチェアと呼ばれる椅子は、その代表的な物。前期ジャコビアン様式は、エリザベス様式の影響を受けつつも装飾に自由さが表れ軽快なイメージがあり、後期ジャコビアン様式は、華美で享楽的なバロックが復活したスタイルである。
■ジャパニーズスタイル
日本風のインテリアスタイルのこと。伝統的なインテリア要素を、現代的な生活に合わせ、モダンにアレンジしたスタイルである。日本の伝統的な素材である和紙や竹、漆喰、無垢材といった素材や、落ち着いた色を基調にするのが特徴。これらのインテリアを、畳や障子、襖、屏風、床の間などの、直線と面で構成される空間にしつらえたスタイルのことを、ジャパニーズスタイルと言う。このような純和風のスタイルだけでなく、生活様式は欧米型でありながら、和の要素をミックスさせたような「ジャパニーズモダン」や、禅の思想を取り入れた「ゼンスタイル」と呼ばれるスタイルも提案されており、これらは新しいジャパニーズスタイルであると言える。
■準工業地域
用途地域の一種で、主に環境の悪化をもたらさない工業の利便性を図るために定められた地域のこと。用途地域に課せられている建築物の制限は建築基準法によって定められており、街の利便性、機能性を向上させるために必要とされている。「準工業地域」は、用途地域の中でも利用の選択肢が多いという特徴を持っており、汎用性が高い地域と言えるが、住宅と工場、遊戯施設等が混在することになるため、統一性がなく、騒音問題等がしばしば挙げられている。「準工業地域」に建築可能な建物の具体例としては、住宅や兼用住宅、商業店舗、事務所、旅館、映画館や劇場、パチンコ店などの娯楽施設、学校、病院、車庫、倉庫業を運営するために必要となる規模の大きな倉庫といった建物となる。
■準住居地域
第一種住居地域や第二種住居地域といった用途地域より、多くの建物が建築可能な地域のこと。第一種住居地域では、面積3,000㎡以下で建築する必要があるが、「準住居地域」では1万㎡以下と定められている。幹線道路沿いに広がり、自動車関連施設との調和を図るための地域でもある。建築可能な建物は、居住用の建物や教育施設、店舗、事務所、旅館、娯楽施設、倉庫、自動車の修理工場などになるが、風俗関係の施設や準工業地域に建ててはならない工場などは建築不可。10mを超える建物は、日影規制を受けることもある他、斜線制限によって道路斜線制限と隣地斜線制限が適用される。
■準耐火建築物
建築基準において耐火建築物以外の建築物のうち、その主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段)が準耐火性能を満たし、かつ、延焼の恐れのある開口部(窓やドア)に防火戸など、火災を遮る設備を有する建築物をいう。「 準耐火構造」とは、壁、床、柱等の建築物の部分の構造のうち、準耐火性能の基準に適合する構造で、国土交通大臣が定めたもの、または国土交通大臣の認定を受けたものをいいます。「準耐火性能」とは、通常の火災による延焼を抑制するために必要とされる性能で、加熱開始後に各構造に応じて定められる一定の時間(おおむね45分間)、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであることなどの要件が定められている。
■準防火地域
住宅や店舗といった建築物が密集した市街地を火災から守るために定められた地域のこと。「準防火地域」に指定されている場所に建物を建築する場合には、地階を除いた階数が4以上、もしくは延べ面積が1,500㎡を超える建物は耐火建築物にしなければならず、また延べ面積が500㎡以下の建築物は木造でも良いとされている。防火地域では建築物の規制もこれらより厳しくなっており、建物は耐火建築物である必要がある。鉄骨鉄筋コンクリートなどの不燃素材を用いた建物がこれに該当し、商業施設のような大規模な建物が火災に見舞われ、甚大な被害を出さないために指定されている。準防火地域は広範囲に指定されることが多く、また防火地域の外側の地域に指定されるケースが多い。
■ジョージアン様式
イギリスのハノーバー朝の国王ジョージ1〜4世の時代に普及した建築、工芸の様式である。1600年代半ばにイギリスで広まり、建築マニュアルなどによってアメリカに伝えられた。ジョージアン様式では、切妻屋根または腰折屋根に、ドーマーウィンドウと化粧手すりが設けられている。当初は組積造であったため、外壁は1階、2階とも同じ位置として総2階建てで作られた。シンメトリーで柱間が開口部を中心に奇数になるように作られている。窓はダブルハングウィンドウで、縦長の6〜12枚の小さなガラスのサッシで構成。玄関はパネルドアにトランザムと壁付柱でペディメントが付いている。17世紀の富裕層の間で人気を集めた。
■ジョイナー
ボード材仕上げの場合に、目地部分に用いる細い棒状の化粧材のこと。木製、金属製、プラスチック製などがあり、連続的につなぐだけでなく、端部用のジョイナーもある。また、コの字型や入隅用、出隅用などの物も。サイディングなどの目地そこに用いる凹型のジョイナーを、継目ジョイナーと呼ぶ。
■城郭建築
敵の侵攻を阻むための天守、櫓、土蔵、塀等からなる建築物の総称。防御力強化のために頑丈に作られるのはもちろんのこと、城主の武力や権力の象徴として、美しく立派に仕上げられた。そして、政治の拠点という側面を持っている。そのため、様々な施設が必要とされた。特に安土桃山時代の城郭建築の発展は、それまで建築技術の最先端が、寺社仏閣などの宗教的建造物から城郭建造物に移ったことを表し、社会の関心が変化した時期と重なる。江戸時代には、幕府の政策として築城を各地の大名に請け負わせた。これにより、諸大名に城郭建築の技術が広まり、各地でこれらの技術を取り入れた城が建築されるように。
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