建築用語集
■ネオクラシシズム
新古典主義のこと。18世紀中ごろから19世紀初頭にかけて西欧で広まった。支配的なほどの芸術思想であり、バロックやロココに対して強い反発を見せた古典古代を重視した思想のことである。建築だけではなく、絵画や彫刻、音楽など美術分野で大きく広まっていった。きっかけになったのは、ポンペイの遺跡の発掘。18世紀前半に行なわれたことが、多くの関心を高めることとなり広まっていった。ロココが甘美で貴族主義的な側面を持っていたことに対して、形式美や写実性を重視している。フランス革命により、ナポレオンが台頭したことで古典的な英雄主義が高まり、さらに加速していくことになった。ジョージアン様式もネオクラシシズムの影響を強く受けている。
■根がらみ
床束を固めるために用いられる横木のこと。倒れたりしないように組まれた部材をさす。束自体に貫通させるのではなく釘で留めることが多いのは、断面欠損を避けるためであり、その多くに貫材が使われるため根がらみ貫と呼ばれる。床束間に相互に渡して用いるが、これだけでは体力不足になる束が高い状態の場合、筋交いをかねることもあるほど重要になることも。かつては床下が高かったため、必要不可欠な存在であった。しかし、だんだんと床が下がってきているため、使用の頻度は減少傾向に。これは、独立基礎だったために高くされていったが、床下にはコンクリートが打設されるようになったことで、床が下がり使う必要自体がなくなった。
■根切り
建物の基礎や地下室などを造る場合に、地盤面下を掘削して、所要の空間を造ること。「根伐り(ねぎり)」と書くこともある。掘削の形から、「布掘り」「総掘り」「壺掘り」などに分けられる。布掘りとは、底部の一部を帯状、もしくは布状に根切ること。総掘りとは、構造物の底部全面を根切ることだ。周囲の地面の崩れを防ぐために周囲を崩れない程度の斜面にして根切る方法や、山留め壁という壁状の工作物を側面に造って根切る方法、また地表で構造物を造って、その底部を根切り沈設するケーソンという方法などが使用される。根切りをした際の底の水平面のことは「根切り底」と呼ぶ。雨の日を避けて根切りを行なうのが普通である。
■根杭
斜め方向のパイプや丸太などを固定させるために、それらの根元の地盤下に打ちつける補強用の杭のこと。また、近世の堤防の決壊箇所を補強するために打ち込まれた杭も根杭と言う。置杭と呼ばれることもある。
■猫脚
家具に取り付けられている脚の形のこと。猫の脚に似せて作られたため猫脚と呼ぶ。テーブルや椅子などの家具に使われているが、曲線を優美なラインで使っているため、独特の雰囲気を醸し出すことができる。弾むや飛び上がるということを表すダンス用語から、カブリオールレッグとも呼ばれる。クイーンアン様式の変形であるチッペンデール様式が表れたことで、たくさんの家具が作られるようになり、猫脚も見られるようになっていった。上部には太さを持たせてあるが、湾曲して下がっていくにつれて細く作られていく。下部は丸く収めていくため、猫のつま先のように見せている。ロココ文化の成熟とともに、家具のデザインのひとつとして大流行した。
■猫土台
基礎の立ち上がりと土台の間にパッキンを用いて床下換気を行なう方法のことで、基礎パッキンとも言う。樹脂製の物や金属製の物がある。土台自体が基礎の立ち上がりに触れないように浮かされているため、床下換気を行なうことができる。これにより、土台の腐食や床下換気の効率を高められる。90cmごとに入れていくが、柱下や大引の取合い箇所に入れることが必要となる。基礎に開口を設ける必要がなくなるため、断面欠損を作り出すことがない。基礎の強度を考えた場合には、猫土台は理想的な換気システムとなる。水が入ってしまうようになると問題があるが、改良を進めていった結果、侵入をかなり防ぐことができ、心配になるようなことは起きないようになった。
■猫間障子
障子の一部を上下や左右に開閉できるように、小さな障子を組み込んだ物である。大額障子や雪見障子のガラスの上に開け閉め可能な小障子を取り付ける。寝間の換気用が本来の形と言われ、もとはガラスは入っていなかった。また、本来の猫間障子は、障子を閉めた状態で猫が出入りできるように細工した障子で、やはりガラスははめ込まれていなかったとも言われている。他に引き分け猫間、片引き猫間、上げ下げ猫間などがある。摺り上げ障子の一種。猫間障子は、下半分くらいにガラスがはまっており、その上に取り付けた障子が上げ下げできる物、雪見障子は、下半分にガラスがはまっているだけで、上げ下げの障子はない物が一般的であるが、近年では、猫間障子を雪見障子の区別なく使用されることも多い。
■ネストテーブル
大・中・小の3つ、もしくは4、5つのテーブルがひとつのセットになっているテーブルのこと。同じデザインでサイズ違いのテーブルが、入れ子式、つまりネストにしまうことのできる組み込み式となっている。それぞれのテーブルのサイズがひとまわりずつ違うため、順番に下にしまい込むことが可能。通常はひとつのテーブルとして小さいサイズの物を一番大きいサイズのテーブルの下にしまっておき、必要なときに引き出して使う。19世紀に広く普及し、主にリビングなどで使用された。「ネストテーブル」には、様々な材質、デザインの物がある。天板が木の「ネストテーブル」、天板レザー、ガラストップの「ネストテーブル」、主流の猫脚の「ネストテーブル」、オークネストテーブル、ミッドセンチュリーネストテーブル、収納される小さなテーブルが通常の「ネストテーブル」とは異なった収納方法で親テーブルに収まるタイプの「ネストテーブル」などがある。
■熱橋(ネッキョウ)
ヒートブリッジとも呼ばれる現象のこと。建物の中でも熱を伝えやすい部分で、熱を橋渡ししてしまう存在となるため、熱橋と呼ばれる。局部的に熱を伝えてしまう部分で、熱が逃げていく存在にもなる。外壁と内壁をつなぐ部分となるため、断熱性能の低下を招く。熱伝導率が高まってしまうと、内部結露の原因ともなってしまうため、耐久性を保つためにも十分に配慮しなければならない。省エネという観点からも、冷暖房効率を落とす原因となり、光熱費の増大を招くことに。断熱材があれば問題がないが、コンクリート造りにおいて鉄骨が貫通していると熱橋となる可能性が出てくる。外壁断熱の在来工法の場合には、柱や梁といった部分が熱橋となる。
■熱線吸収ガラス
熱線の吸収を高めるためにガラスの原料に着色を施したガラスのこと。ガラスに薬液を塗布したり、またはガラスの原料にコバルト、セレン、鉄などの金属を微量添加するなど加工したりすることによって、太陽光線を透過する割合を低下させたガラスである。可視光線より波長の長い電磁波を吸収することによって、熱を通さないという原理を活用した物だ。日射を30〜40%吸収することで冷暖房効果を高める働きがある。また、直射日光を和らげて眩しさを抑える働きも。着色しているため、厚みが厚くなるほどに色も濃くなる。そのため、普通のガラスと比べて厚く色も濃くなり、熱線吸収率も高くなるため、熱割れの原因になるので注意が必要だ。
■ネット金額
請負者側の見積り金額にさらに値引き等を含めた最終的な金額のこと。また、文脈によって現場経費まですべて含んだ工事金額をさしたり、値引きできる限界の価格のことをさすことも。工事金額の場合、事務所経費などは含まれていないことが多い。ネット価格、NET金額などと表記される場合もある。ネットと対の意味で使われるのがグロスという言葉で、グロス金額といった場合には、値引き前の見積り金額や、諸手数料等を含んだ価格という意味になる。ネット金額もグロス金額も、業者間のやり取りで主に使われる言葉であるため、一般の施主が目にする機会は少ない。解体作業時にはネット金額ではなく値引き前の金額が施主に提示される場合が多い。
■熱貫流率(ネツカンリュウリツ)
K値とも呼ばれるもので、断熱性能を表す率のこと。物体は必ず熱を伝えるが、熱伝導率ではなく、壁や床などの物体がどれだけ断熱することができるかという性能を表している。熱量の伝達を表していることになるが、両側の温度差を基準としていく。1㎡あたりで考えられ、1時間に何キロカロリーの熱が伝わるかをK値で表す。つまり、この差が大きければ、それだけ断熱性が高いということになる。単位はW/㎡・KやKcal/㎡h℃といった単位が用いられる。熱貫流率を知ることによって、熱損失の割合も見ることができるため、部材ごとに比較することが可能に。窓ガラスや天井も対象とすることで、効率的な断熱構造を作り出す情報となる。
■熱伝導率
熱の伝わりやすさを表した値のこと。熱伝導率が大きいほど、熱が伝わりやすく断熱性能が悪いと言える。算出方法は、物質の両面に1度の温度差があるとき、1時間に1㎡当たりどれだけの熱量が伝わるかを測定する。単位はW/m・Kである。熱伝導率の逆数をとった値は熱抵抗と呼ぶ。熱伝導率は材料の種類と密度によって変化する。例えばアルミニウムなどの金属では、数百の値をとるのに対して、コンクリートやモルタルでは約1.5、グラスウールなどの断熱材では0.1以下の値をとる。熱伝導率を物質の厚さで割った値は熱伝導係数と呼ぶ。熱伝導率は、熱流入係数や熱損失係数などを計算する際に必要になる値だ。
■熱容量
物体の温度を1度上げるのに必要な熱量のこと。比熱は単位質量当たりの熱容量であり、均一な物質の場合にはそこに対象の物質の質量を掛けることでその物質の熱容量が求まる。熱容量の単位はJ/Kである。一般的に、鉄筋コンクリート造の建物の熱容量は大きく、これに対して木造の建物の熱容量は小さい。熱容量が小さい建物は、昇温しやすく、温度が下がりやすい建物だ。熱しやすい材料では、太陽のエネルギーですぐに高温になり、室内まで暑くなりやすい。熱容量の比較的大きいコンクリート造の建物は熱しにくく冷めにくいため、夏は昼間に太陽光で熱されて夜までそれが残り、逆に冬はなかなか温まらないためどちらにしてもエアコンの稼働が多くなってしまう。そのため、木材とコンクリートなど異素材を組み合わせて使用するのが理想的である。
■眠り目地
石張りで、同じ材料同士、隙間を空けずに突付けて施工する際の継ぎ目のこと。突付け目地や盲目目地とも言われる。石積みの擁壁などに多く見られる目地である。擁壁の場合、目地材を入れるとその強度に擁壁の強度が左右されてしまう。それを避けるために眠り目地が用いられる。石から石へ直接荷重が伝わるため強度が高い。眠り目地には逃げがないため、高い石の寸法精度が求められる、非常に高度な張り方だ。タイルなど、化粧材も眠り目地にする場合がある。レンガやタイルなどが手作業で作られていた時代には微妙なサイズのばらつきが出るのが当然だったため、目地で位置を調節するのが一般的だった。工場生産で均一な大きさの物が大量生産されるようになってからは、デザイン性を重視して目地を小さく、あるいはなくすようになった。
■粘土瓦
粘土を使った焼き物の瓦のこと。日本瓦、和型瓦として多く用いられている。粘土瓦は、焼成方法によって分類されていて、表面に釉薬を塗布した釉薬瓦、焼成中に食塩釉を施した塩焼瓦、釉薬が塗られていない素地瓦戸がある。粘土瓦葺きは他の屋根材に比べて屋根の重量が重くなるため、耐震性能を考慮した設計が必要。釉薬瓦は、粘土を成形した瓦に施してからガラス質の釉薬を焼成する瓦だ。塩焼き瓦は、焼成の最終工程で燃料と一緒に食塩を釉薬の代わりに釜に入れた物で、表面に赤褐色のガラス状の層が形成される。塩焼瓦で表面にガラス状の層が形成されるプロセスは化学的に制御が難しいことから、塩焼き瓦の生産量は減少傾向にある。
■粘板岩
堆積岩の一種。泥が堆積してできた泥岩が変成してできた石材で、玄昌石やスレートなどとも呼ぶ。薄い層状に剥離することができるため、屋根材にもよく用いられる。防水性、耐久性から、屋根や床を葺くのに広く使われている。スペインは粘板岩の世界第一位の産出国で、その次にブラジルで産出し、広く欧米で用いられてきた。また、スレートは建材としてだけでなく、灰色を呈する顔料としても用いられている。含んでいる鉱物種の違いにより、緑色や紫色を呈する物もある。その他硯や碁石、墓標、黒板等にも使われる石材だ。日本国内で産出される代表的な物としては、宮城県の仙台石、和歌山県の那智黒などがある。
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