建築用語集
■内装工事
壁、天井、床など室内の仕上げ工事のことである。建物内部の仕上げ工事の内容から、木工事、左官、屋根、タイルなどの他の工事で計上されるものを除いた、建物内部の工事のほぼすべてを表す。天井、壁面の塗装、クロス張りといった仕上げ工事、フローリング貼りといった床面仕上げ工事、また建具や造作家具といった工事が内装工事に当たる。天井や壁では石膏ボード、合板、繊維板、金属板、クロス、壁網などを用いて、床にはカーペット、プラスチック、フローリング、タイルクッションフロアなどを用いて仕上げる。畳敷きや開口部のカーテンやブラインドも内装工事に含む。最近の仕上げ材は加工技術やプリント技術の進化によって、素材、テクスチュア、色の組み合わせなどについて変化に富んだものが多数製品化されている。
■内装材
内装に使われる材料のこと。用途に合わせて様々な物が使われている。構造部材が見えたままを仕上げとする場合を除き、内部から見えないように下地を含めた材料を内装材と呼ぶ。下地に使われる物や仕上がりを重視した物もある。インテリアとして考えられることが多いものの、安全で快適な生活環境を作り出すために、難燃性や不燃性といったことも求められる。素材は天然素材から合成素材まで多岐にわたるが、シックハウス症候群などの問題から、ホルムアルデヒドの発散量に応じて等級が決められており、使用範囲に関して制限が設けられるようになった。内装材は、多岐にわたるが、内装工事と呼んだ場合にはクロスの施工を指すことが多い。
■内装制限
安全を確保するために建築基準法で定めている制限のこと。建物内部で火災が発生した際、内装が燃えて火災が拡大するなど、有害ガスが発生しないよう、仕上げ材を不燃性や難燃性の物にする。制限を受ける内装は、1.2m以上の高さの壁部分、及び天井となっている。そのため、床や腰壁、窓台の部分については、難燃処理をしていない木質建材が使用可能。内装制限は、建築物の用途や規模により異なる。内装制限を受ける可能性がある建築物は、劇場や映画館、病院、ホテル、福祉施設、学校、百貨店など。また、開口部がほとんどない居室がある物や、火を使う場所では内装制限を受ける可能性がある。
■ナイトテーブル
ベッドの枕脇に置くサイドテーブルのこと。時計、本、照明スタンドなどを置くための天板と小物を収納できる引出しなどからできている。照明が付いている物や、照明器具を置くことを想定したコンセント付き、本棚付き、動かせるようにキャスター付きの物、ミラー付きの物もある。寝室に置く物なのでフットライト付きも存在。ホテルのベッドの脇にはたいてい置かれているナイトテーブルであるが、その場合はベッドと同じ素材でシンプルな物が多い。テーブルの上には照明、メモ帳、目覚まし時計といった必要な物が置かれている。サイドテーブルとよくセットで考えられている照明は、就寝前に使うためやわらかい光の物が合うとされている。
■ナイトラッチ
内側からボタンやつまみを回すことで簡単に施錠できる装置のこと。扉に取り付けられる補助錠でもあり、必要なときにすぐに施錠できるメリットを持つ。外部からは鍵を使って開けることが多い。内側から施錠していてもノブを回すことで開錠できる物もある。簡易的に使うことができるが、普段施錠しないような場所であっても、ボタンやつまみで内側から施錠できるところがメリットであり、外部からは簡単に開錠できない。トイレなどに取り付けておくことで、素早く施錠することができることから、公衆トイレなどにも利用されている。古くから使われてきた施錠方式で、シリンダーさえ一致すれば、現在の物でも交換することができる。
■内部仕上表
室内仕上表とも言い、建築物の内部空間の状況を、ひとまとまりの空間(部屋)ごとに示した一覧表のこと。床、天井、壁などの内装の仕上げを表にまとめた物であり、材種、規格などが記されている。「仕上表」とは、建物の仕上材に何を使用するかを示す図面のことだ。建物の中には様々な部屋があり、使い道によって仕上材も変わってくる。そのため、仕上げ表により部屋ごとの仕上材を指定して部屋のグレード分けをすることが可能。仕上表には、内部仕上げ表の他、「外部仕上表」がある。外部仕上表とは、軒、屋根、外壁などの仕上げを表にまとめた物のことだ。外部仕上表は、立面図や矩計図で代用されることもある。
■中庭
庭の形態のひとつで、建物に囲まれているスペースのこと。京都の町家などによくある「坪庭」もそのひとつと言える。また、母屋と離れの間の空間や、屋内の土間を「中庭」と呼ぶこともある。メリットは、「中庭」に面した部屋は明るくなり、また家の中の風通しが良くなる、自分の家に囲まれているためプライバシーが守られるなど。しかし、外壁が増えることから建築費が高くなる傾向にあり、また冬場は家の断熱効果が下がり寒くなる可能性もある。「中庭」を設置する場合は、これらのデメリットも十分な検討が必要。
■長手積み
レンガの積み方のひとつであり、長手方向に積み上げていく方法のこと。馬目地状に積み上げていく方法で、長手面だけが現れるように積んでいく。千鳥に積んでいくことになるが、壁厚は小口の厚みに限定されることになる。小口積みと比べて、構造的にはほぼ変わらない積み方に。強度ということを考えた場合には、壁厚が減ってしまう分だけ小口積みに劣ってしまう。様々なところで見ることができるが、日本で代表的な場所として、横浜市開港記念会館がある。防水工事で土嚢を積みあげる場合にも、長手が水に向かうように積み上げる方法を長手積みと呼ぶ。防水工事の基本的な積み方で、3段積みや4段積み、5段積みと重ねていく。
■長屋
集合住宅の一種であり、2戸以上の住戸が階段、廊下、ホール、エレベーター等を共有する構造の「共同住宅」とは違い、戸境壁を共有する他は共用部分を持たない連棟住宅のこと。すなわち、1棟の建物を水平方向に区分し、それぞれを独立した住戸とした構造となっていて、住戸ごとに直接接道など外界に接した専用の玄関が付いている。テラスハウスや、タウンハウスと呼ばれることも。かつての長屋は多くが平屋であったが、住戸を上下に重ね、2階住戸にもそれぞれ専用階段を設けた造りの「重層長屋」と呼ばれるタイプもある。共用部分のない「重層長屋」では、敷地を最大限に活用できるため、共同住宅に比べて各住戸の専有面積をより広くすることが可能。
■流れ造り
平安初期に成立した神社本殿形式のこと。流れ造りは、流造と書くことも多い。切り妻屋根の全面が長い特徴を持っており、沿って前に曲線形に伸びていくが、これが向拝を形成している。神社の本殿形式として、他の形式よりも一般的にみられるものとなった。側面から見ると、屋根は対称形ではなく、正面側が長い。曲線の美しさが特徴となるが、このラインは明神造には存在しないために区別がつく。柱は丸柱を使っているが、向拝だけは角柱を使う。独自に成立したのではなく、明神造を発展させた形となるため、他の様式と比較しても歴史は浅い。最古のものとして確認され現存しているのは宇治神神社本殿で、平安時代時代の後期の建物として残っている。
■長押(ナゲシ)
柱同士の上部などを水平方向につないで補強するために柱の外側から打ち付けられる物のこと。基本的に和室に用いられる。当初は上級層の住宅のみで用いられていたが、中世になると庶民の住宅でも用いられるように。中世以降は部材が薄くなり、構造的な必要はなくなり、装飾的な部材となった。材質はたいてい柱と同材の物が用いられ、杉の糸柾などが良材と言われている。その他、杉や檜のシボ丸太や面皮付き磨き丸太が使用される。洋服をつるす、または額などを設置するために使われていることが多い。「長押」にはいくつかの種類があり、一般的に和室にある「長押」のことは「内法長押」と呼ばれる。取り付けられている場所によって名前が異なり、柱の最も下にある「長押」は「地覆長押」、蟻壁の下にある柱の頂を抑えるために天井と柱の切れ目に付けられる物は「蟻壁長押」と呼ばれる。その他にも、本長押、半長押、腰長押、地長押、天井長押、廻縁長押などがある。
■那智黒
粘板岩の破片でできた砂利で平べったく丸く、黒良色の石のこと。黒い小石の代名詞と言える物であり、熊野川の河口に流れ着く那智黒は、さらに太平洋の荒波で丸くなっていった石を拾い集めて、碁石の黒石やすずりにも使われている。さらに磨きをかけていくこともあるが、そのままの風合いを残した物も。現在は輸入される物も多くなった一方で、名産地として和歌山県の那智地方や三重県の熊野市などで産出される物はよく知られている。こうした流れになったこともあり、黒く丸い小さな小石は、総じて那智黒と呼ばれるようになった。雰囲気として和風にすることができるようになるため、床にまいたり手水鉢に敷いたりする。
■夏型結露
梅雨、台風、豪雨などの場合、外気は異常に多湿になり、冬の結露に対して、夏型結露と呼んでいる。夏の大気は一般に多湿で、家の中で起きる結露ではなく、住宅の基礎部分や壁の中、地下室やコンクリート布基礎、クーラーの排気口、土間など、地上に近い部分の結露が多い。家の基礎が夜に冷え、そこに湿った空気が触れて結露することがある。新築の場合は木材が完全に乾ききっていない場合や、温度が高くなったときに、中に含まれていた水分がしみ出て温度の低い箇所で結露することも。この結露によって木が腐る、あるいは、断熱材が湿り、断熱性能を失うという問題が発生。冬の結露は壁なと表面に現れるため分かりやすいが、夏型結露は壁の中など目に見えないところに起こるため、気づきにくい傾向がある。
■ナトリウムランプ
高輝度放電ランプのひとつで、高圧ナトリウムを蒸気中に放電させて光らせるランプのこと。ガラス管の中に封入してあり、アーク放電で発光する。オレンジ色の強い光を出すことが特徴。封入するときのナトリウム蒸気の圧力を高めている物は、高圧ナトリウムランプと呼ばれることもある。水銀灯に比べると2倍の効率を持っているランプであり、トンネル照明や道路照明に使われる。省エネにも効果があり、工場のようにエネルギー効率を考えるようなところで使われることも多い。封入圧力の低い低圧ナトリウムランプは、発光効率が高い代わりに単色光になってしまうことから、演出のランプということを考えると、低圧はあまり効果が上がらない。
■海鼠壁(ナマコカベ)
左官仕上げで行なわれる方法の一種。平らな瓦を張りつけていく方法で、目地部分に特徴がある。漆喰を使って半円形になるように盛り上げるように塗っていくことから、これが海生生物であるナマコに見えるために海鼠壁と呼ばれるようになっていった。四半目地がもっとも多くみられるが、馬目地や六角目地で作られることもある。江戸時代の武家屋敷で行なわれるようになったものが、民家にも使われるようになって広まっていった。土蔵造りに使われているものを多く見かけることができる。劇場にも使われることがあるが、これは意匠的な応用と言える。もともと耐水を目的としているものであり、壁や土蔵造りの下半分に使われるものだった。
■ナマシ番線
焼きなました軟鉄から作られる針金のこと。結束などに使用され、通常の鉄線を過熱したあと、緩やかに冷却してやわらかくして作られる。「番線」「なまし線」「なまし鉄線」とも呼ぶ。普通の針金では難しい引き絞りにも耐えるため、丸太足場や支柱の固定などに使用される。防さび処理のメッキが一般的にされていないので、表面にさびが付きやすい。様々な太さの種類の物があり、多くの用途に使用される。土木、建築業、スクラップ業などにおいて、固定、結束、荷崩防止、プレス後の縛りなどに使用。番線と呼ばれる理由は、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅といった針金の直径が番号で呼ばれているためである。
■軟弱地盤
建物を建てたときに、安定させることができずに沈下してしまうような支持力が低くやわらかい地盤のこと。このままでは建物が悪影響を受けてしまうことになり建てることができないため、地盤改良を行なったりすることで、強固で耐えられるものにしなければいけない。軟弱地盤はやわらかい粘土や緩い砂からなることが多く、大きな沈下だけではなく、液状化現象を引き起こしてしまう可能性も出てくる。単位として考えた場合には、地耐力が30KN/㎡に満たないような地盤は、軟弱地盤ということになる。N値では3以下の粘土性、N値5以下の砂質土も軟弱地盤と呼ぶ。低湿地に位置することが多い特徴があり、洪水に襲われたりする可能性も出てくる。
■南中時刻
太陽が真南にくる時刻のことで、地方ごとに異なる。また南中時刻が季節ごとに異なるのは、地球の公転軌道が楕円であり、太陽に近づくと速くなるという性質を持っているからだ。日本には標準時を決めている明石があるが、東経135度に位置している。平均太陽が通過した時間を12時とする。これにより日本標準時が決められることになるが、実際に明石で必ず12時に通過するわけではない。これは季節によって異なることになるためで、夏は速く通過することになり、冬は12時より遅い。このずれは、最大15分にも達する。南半球では、北に太陽があることになるため、南中時刻ではなく北中ということになってくる。
■納戸
防寒のために板や土壁で閉じられた窓のない部屋のこと。その歴史は古く、平安時代から存在している。その当時は、寝間や高価な宝物を収納する納殿とも呼ばれていたが、江戸時代の頃にはほとんど使われなくなり、調度品や高級品を収納するスペースを意味するようになった。現代では、季節用品や生活用品などを収納する物置、あるいは収納スペースを意味し、欧米住宅に備え付けられているウォークインクローゼットとほぼ同じ機能を持つ空間として認識されている。「納戸」の他に、押入れやクローゼット、もしくは、サービスルーム、スペアルーム、ユーティリティスペース、多目的ルームなどと称されることもある。
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