建築用語集
■目板張り
天井や壁板の張り合わせ工法の一種。目板は板と板の継ぎ目をふさぐ幅の狭い板のことで、この目板を表側に取り付ける目板打ち羽目板張りや、目板を裏側に取り付ける敷目板張りがある。目板打ち羽目板張りは、板を張る方向により横羽目と竪羽目に分けられる。雨仕舞のために、横羽目は建物内部の仕上げに使われることが多い。日本建築では横羽目が古くから伝わる工法であったが、鎌倉時代に伝来した禅宗様で竪羽目が使われて以来、竪羽目も広く用いられるようになった。また、板を張る位置により、腰羽目、高羽目に分類される。敷目板張りは敷目天井ともよばれ、敷目板を継ぎ目に用いて板を張る工法で、主に天井の仕上げに使われている。
■銘木
樹齢200年以上、形状や大きさ、材質等が優れた物、製材された材面の観賞価値が高い物のことを言う。「銘木」は一般的な木材とは違う装飾的な価値があり、蟹杢、葡萄杢、笹杢、ウズラ杢、中杢、柾目等の優雅な特質性を備えた杢目を持つ。特に樹心を通った断面に、狭い間隔でまっすぐな縦縞模様がある柾目は、美術工芸品の材料として利用されることもある。しかし実際には、住宅洋風化に伴った需要の減少により、価格の下がった「銘木」も普及されている。そのため、部屋の内装に使用される木材は、樹種にかかわらず木目やたたずまいの美しさを持った物であれば「銘木」とされており、リビングルームのテーブル等も比較的安価で入手できるようになった。
■メガロポリス
紀元前370年頃の古代ギリシアの都市という意味合いもあるが、商業建築用語としては「巨大都市」を意味する。複数の大都市が連なり人口が集中し、人々の暮らしの機能が相互に一体化して形成された、巨大な都市となっている地域のことである。フランスの地理学者である「ジャン・ゴッドマン」が、大都市(メトロポリス)以上のものであるということから、米国のボストン・ニューヨーク・ワシントンまでの大西洋沿岸一帯の都市群のことを「メガロポリス」と命名した。日本においては東京・名古屋・大阪の東海道沿線の都市化地域を「東海道メガロポリス」と言う。東海道メガロポリスは日本において最も人口が集中する地域で、政治や経済、文化、産業の中枢となっている。
■盲窓
窓は存在しないが、一部をへこませることによって、窓のように見せている場所のこと。実際に開口として作られていないため、採光することもできない上、換気も行なうことができない。装飾的なものとして設計されていくことになる。外側からは壁で塞いであったりすることもあり、内側から障子などを取り付けておくことで、窓のように見せるのも盲窓。内装的に用いられることによって、壁に大きなアクセントを与えることができるとともに、開放的な印象を作り出すことができる。窓のように外が見えるようにすると、本物ではないということが視覚的に感じてしまうため、障子のように目隠しすることが、空間演出に重要となってくる。
■召合せ
2枚になっている建具が突きあうこと。部分的にも召合せと呼ぶ。引き違いの建具の場合には、重なる部分のことを指す。拝み合わせと呼ぶことも。引き寄せて閉じるようになっている場合には、必ず合わせる部分が存在する。これによって、密閉性を高めることができるようになるため、召合せが重要な意味を持つ。召合せを作ることによって、隙間の存在を見せることなく使うこともできる。召合せにずれが出てくると、鍵と鍵請がうまく合わなくなったりすることも出てくる他、密閉性が保てなくなり、隙間風が入ってくるようなことが起きてしまう。サッシなどでは、基準位置を調整するだけではなく、左右の調整もできるように機構が備わっている。
■目地
部材の継ぎ目のこと。石やレンガの継ぎ目を指すことが多いが、木材や金属板の継ぎ目に使われることもある。部材の積み方により、継ぎ目が縦横に直線状になる芋目地と、継ぎ目の縦線が2段以上直線にならない破れ目地の2種類に大別される。また継ぎ目の状態により、外見上継ぎ目を見えないようにした眠り目地、継ぎ目を装飾的に処理した化粧目地があり、化粧目地は、出目地、平目地、入込み目地等の種類に分けられる。外壁における「目地」の一番の目的は、建物に雨風が侵入するのを防ぐことであるが、この他にも温度や湿度、経年によって部材が膨張したり歪んだりしたときに、クッション代わりとなって変形部分を調整するという大切な役割を持っている。
■メゾネット
集合住宅の住戸形状の一種で、1戸が2階以上の層を持ち、中が内階段でつながっている住居のこと。簡単に言えば「内階段のあるマンション、アパート」である。「メゾネット」は、マンションの良さと戸建ての良さをミックスしたような住戸。「メゾネット」のメリットとしては、開放的な空間を作りやすく、2層にバルコニーがあるため通風や採光でも有利になる。また、玄関のあるフロアにはLDKを、上や下のフロアに寝室を配置するなど、パブリック空間とプライベート空間を明確に区分できる。なお、全戸がメゾネットというマンションやアパートはほとんどなく、多くの場合、メゾネットは最上階や角部屋など、全住戸の一部に採用されている。
■メダリオン
壁やドアなどの上に取り付けられる飾りのこと。円形の浮き彫りや、立体的な装飾材料のことをさす。また、シャンデリアやペンダント照明を取り付けるときに使われる天井側の装飾材のことを、シーリングメダリオンと言う。別名「シーリングセンター」や「シーリングローズ」とも言うシーリングメダリオンは、シャンデリアとともに、ゴージャスでエレガントな居室空間を生み出すアイテムで、歴史的には漆喰や石膏で作られていたが、現在は硬質発泡ウレタン素材の物もある。漆喰や石膏と比べて軽量で、照明器具の設置が容易に行なえるのが特徴。サイズとしては、シャンデリアよりもひとまわり大きい物が選ばれることも多くある。
■メッキ
金属やプラスチックのベースに対して、他の金属の被膜を表面に施す処理のこと。また表面処理の方法のこともさす。酸化しやすい鉄などの場合、表面を処理しておかなければ、自身が錆びていってしまう。そこで、酸化しにくい金属で被膜を作っていくことで、保護することを目的に施すのがメッキだ。他にも、メッキを施すことによって、高級感を醸し出し、質感も高めることができる。プラスチックに施した場合にも、金属のように質感を変えて見せることが可能である。トタン製品やブリキといった物は、メッキを施した物として活用されてきてきた。トタンは鉄に亜鉛をメッキした物で、ブリキはスズをメッキした物。これによって、耐久性を高めることができるため、建材として使われてきた。
■滅失登記
建物が失われてしまった場合に、登記簿に記載されている部分を閉鎖すること。建物が失われてしまうということには、取り壊しといったことだけではなく、火事や地震といった災害的な部分も含まれていく。滅失登記は所有者の申請が重要になってくる。そのため、申請は滅失から1カ月以内でなければならないうえ、申請義務がある。登録免許税は非課税となるためかからない。土地の売買をする場合には、建物がないことを証明する必要が出てくるため、建物滅失登記をしなければならず、確認も求められる。登録申請を怠った場合には、10万円以下の罰金が科せられる場合も。解体業者などから書類を受け取ることによって、スムーズに行なうことができる。
■メディカルマンション
賃貸マンションなどの1階部分に医療施設を組み入れた複合型住宅のこと。階下が医療施設であることは、入居者にとってはメリットであり、一方で、上階の入居者が固定客になりやすいという点は、入居する医療施設にとってもメリットとなる。また、医療施設側が「メディカルマンション」の建設や経営主で、医療施設における経営収入と、上階からの家賃収入を得るスタイルも存在する。「メディカルマンション」のように、1階部分に医療施設が入居するというだけでなく、高齢の入居者に対して24時間の医療ケアサービスまでも付帯している、「メディカル・ケア・マンション」もある。
■メトロポリス
経済や文化の中心となる大都市のこと。多様な都市機能を兼ね備え、周辺都市との集合体として大都市圏が形成されることも多い。一国やその周辺地方においてのみならず、国際的に連携する際の一大拠点としても認識されており、ニューヨークやパリ、ロンドン、東京などがあてはまる。イギリスでは首都という意味合いもあり、実際に「メトロポリス」の多くが国の首都となっている。由来はギリシャ語で母を意味する「meter」と都市を意味する「polis」を合わせた単語であり、古代において植民地の始まりとなった都市を指していた。当時も政治や文化の中枢として捉えられ、人口の多い大都市であったとされる。アレクサンドリア、ダマスカスなど古代都市として栄え、21世紀にまで人間の居住地として残る例もある。
■目通り
庭木の大きさを測る際に、基準の高さとして目の高さで径や周長を測ること。地方によって1.52mとするところや1.82mとするところなどの違いはあるが、一般的には1.2mの高さを指す。アメリカやカナダでは1.37m、ヨーロッパでは1.3m、イギリスでは1.29mを目通りと定めている。立ち木の目通りの高さにある樹幹部分を「目通り位置」と言い、その直径を「目通り直径」や「目通り周」と言う。目通り直径と根元直径、胸高直径などを比べることにより、樹幹の根元から枝下までの細り具合を推測することができる。また、樹木植栽のときの形状寸法の表示指定に、樹高、葉張りとともに、目通りも使われている。
■面
物の表面のこと。家具などの場合には全面を指す。直接見える部分のことも面と呼ぶ。家具などの場合には、面をそろえることで、通りが決まり、すっきりとした納まりにすることができる。表面の位置をそろえることから、面一という言葉もある。2つ以上の物が、まったく段差のない状態に納まることであり、フラットに仕上げるという意味だ。段差ということでは、バリアフリーにする場合に、段差をなくしてそろえることも面一と呼んでいる。段差を付けてしまうと問題がある場合には、必ず面一にそろえるなどしなければならない。柱などの角材で、角を加工することを面を取ると言う。角があることで、シャープな印象は与えるが、危険性も高いため、面を取ることによって、やわらかな雰囲気にもすることが可能となる。
■面材
板状の表面を構成する材料のことで、合板・繊維板などの板の総称。面材は、軸材・線材に対する語で、パネルなどの構成材も含まれる。構造用合板やダイライト、他にもシステムキッチンや洗面化粧台などの扉に使われている板状の表面材もすべて面材だ。また、土台や柱を一体化して構造用合板などで剛床として、壁面全体で外力を受け止めるようにする工法を、面材工法と言う。面材工法は、壁面全体で地震力や風圧力を受け止め、それをバランスよく分散し、力が軸組の接合部へ集中することを防ぐ。圧縮方向や引張方向といった力の向きには関係なく、あらゆる方向の力に対して均等に受け止めるため、耐震性能が高い強固な構造躯体(くたい)となる。
■免震構造
建築構造の概念のひとつで、地震の揺れによる建物の破損、破壊を防止する構造のこと。似た意味を持つ言葉に制震、耐震がある。これらの言葉は建物を地震の被害を軽減する、建物の破壊を防止するなどの目的において、大きな違いがないため、しばしば混同して使用される。しかし、その仕組みや基本となる考え方は異なり、例えば、免震は地震による被害の防止を意味するが、制震は地震の揺れを建物の内部で吸収し、建物全体の破損リスクを軽減するという考え方。近年、新築される大型建築物では、免震・制振・耐震の3つの技術を取り入れることが主流。大型建築物には、マンションなどの居住用だけでなく、商業施設や工場も含まれる。
■免震構法
地震による揺れや破壊を防ぐため、地震力が直接伝わらないように地震エネルギーを吸収する装置を設けた構法のこと。基礎と上部構造の間に、積層ゴムやダンパーなどを入れる構法などがある。地震と構造体を絶縁することで、激しい地震の揺れを、ゴムの弾力で緩やかな揺れに低減。「レトロフィット」とも呼ばれ老朽化した文化財にも用いられている。免震は、地盤と切り離して建物に地震の揺れを直接伝えない構造だ。似た言葉として「制震」があるが、ダンパーなどの制震部材を組み込んで地震の揺れを吸収する構造のことを言う。「耐震」は、建築物が倒壊せずに住人が避難できることを前提とした、揺れに耐える構造となっている。
■面戸
隙間や隙間を塞ぐための部材のこと。板状の物のことを面戸と呼び、どこで使うのかによって様々な種類が存在している。桁の上に乗せる垂木どうしの間に挿入する板のことも面戸だ。化粧垂木の場合、どうしても軒桁の上に乗せることになるために隙間が空いてしまう。これを塞ぐために用いられている。瓦屋根の場合には、軒面戸と呼ばれており、どうしても劣化を伴いやすいことからプラスチック製が多い。隙間を埋めるために、ポリエチレン発泡体を使った物もあり、隙間の形状に合わせた形に仕上げることができるようになっている。化成品のため、形状に合わせた加工もできるうえ、かたさや接着剤の有無ということも選んで作ることもできる。
■面取り
角を削り斜めや丸く仕上げること。加工方法のことで、各部材に合わせてやすりを使ったり、専用の工具によって削ったりしていく。面取りすることによって、角が鋭角にならなくなり、怪我をしたりすることが防げる他、不意の接触によって破損したりすることを防止できる。部材自身ということを考えても、角があることによって、何かと接触すれば破損する危険性は高い。削って丸くすることによって、意図しない欠損を生み出す予防策にすることができるうえ、構造体の体力の低下を解消することも可能に。意匠的な部分としても、丸みを帯びた仕上がりとなり、やわらかな印象作り出していく他、全体的にまとめ上げることができるようになる。
■面面
表面から表面までの距離を基準とした寸法の測り方のこと。材料や部材の表面のことを、躯体(くたい)面、仕上げ面、柱面のように「面」と言う。そこで、「躯体面から仕上げ面まで40mm」というようなときに、面面という測り方となる。面面は「面押さえ」と同じ意味で使われる。面面以外に、内側から内側までの距離を基準とした寸法の測り方は、内内と言う。そして、部材の中心から中心までの距離を基準とした寸法の測り方は、芯々と呼ぶ。全周が見える部材の間を測るときには芯々のことが多いが、壁や仕上げ面などから測るときには、面面で測ることが多い。また、外面から外面までの距離は外面間と言い、いろいろな測り方を、部材や場所により使い分ける。
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