建築用語集
■キープラン
建物のある部分が、全体のどこに位置するのかを示すための簡略化した平面図のこと。断面図の断面箇所や建具リストなどの案内に利用されることから、案内図とも呼ばれる。そのものの図面だけでは、どこに何を付ける物なのかが分からない。そのため。キープランがあれば、全体の中でどこに付くのかの手がかりになるのかが分かる。例えば、アルミ窓は「aluminum window」を略した「AW」で表記され、ステレンスドアは「stainless steel door」を略した「SSD」と表記。キープランは、それぞれのドアや窓が、どんな素材で作られ、どのくらいの大きさなのか等の情報を記した建具表とあわせて使用されることが多い。
■木表・木裏
板目材で、樹皮に近い方の面を木表、樹心に近い方を木裏と言う。丸太の場合、板目に製材し、外側に近い方が木表となり、芯に近い方が木裏だ。板材では、木表は、木裏よりも木目が引き立ち美しく仕上がる。目立つところである「見附」には木表を使うのが一般的。幅や長さ方向の反りとも、木裏が凸面になりやすい。木表の方が木裏よりも樹齢が若いため木の収縮が大きく縮む。この反りを利用して、日本舞踊や能の舞台には木裏が利用される。板の中心が膨らむために、足の裏が板の端に引っかからないという利点がある他、滑りが良いためだ。また看板などにも木裏が用いられることがある。
■生地仕上
木材の木目、地肌色合いをそのまま生かした仕上げのこと。素地仕上げとも言う。色のついた塗料による塗装は行なわず、汚れ止めにワックスかクリアラッカーなどの透明塗料でコーティング。これによって素材色がぬれ色となって仕上がり、木材の肌もそのまま表現される。無垢材に塗装した場合にはムク仕上げとも呼ぶ。透明の漆を塗ったような仕上がりになるのが特徴。同様な塗装でも、肌の白い木材に無黄変の塗料を使用し、かつ光沢を少なくすることで、見た目には何も塗っていないような仕上げることが可能である。このような仕上げを白木仕上げと言う。白木仕上げでは質感や美しさを保つため、ごく薄膜で保護機能のある塗料の選定が必要だ。
■木摺り(キズリ)
塗壁の下地に使う、幅30ミリ程度の小幅の板。杉など小幅板を1センチ程度の間隔で、水平もしくは垂直に釘で打ち付け、そこにモルタルなどを塗る。漆喰壁の場合は、すのこ上に間隔をあけて板を柱に打ち付け、それを直接下地とする。また、モルタル塗りの場合は、木摺りの上にアスファルトフェルトと、メタルラスなどを貼って下地を作り、その上にモルタルを塗るが、この場合ラス板とも言う。下地となって外に見えることはないため、粗木のままで使われるのがふつう。木裏を外側に向けるのが定法だ。板に45度の勾配を付けて貼ると、粗しと呼ばれる。京町家建築では、土壁を塗るために木摺り下地を作る。
■基礎断熱工法
建物の外周に面した基礎の立ち上がりに、板状の断熱材を施工する断熱工法である。床に断熱材を施工せず、床下換気口や基礎パッキン工法を設けないのが特徴。地盤に接するため、シロアリ対策には注意が必要である。基礎断熱工法は、床断熱に替わる断熱方法として確立されてきた。床断熱は、床下換気を行なう場合に使う断熱方法で、さらにその下の基礎に断熱材を施工する手法である。寒冷地北海道の住宅への施行、検証がなされ、寒冷地の汎用技術として確立された。床断熱と大きく異なるのは、床下換気口を持たず、基礎よりより内側を室内側ととらえる点だ。床下空間も温度が保たれるので、床下環境が改善され、木材の普及に対して安全とされる。
■基礎伏図(キソフクズ)
縮尺、百分の1程度で、建物の基礎全体の形状を見下ろして表した図面のこと。構造図の一種だ。布基礎やべた基礎であっても、基礎の断面などを含めて描かれ、使用する鉄筋の種類、配筋の方法、人通口、アンカーボルトやホールダウン金物の位置なども示されている。汚水排水や雑排水といった、排水経路も基礎伏図で検討。基礎工事はこの基礎伏図を見ながら進められていく。基礎伏図は、住宅に住むうえでは直接関係のない図面であるため、施主の手に渡らない場合もあるが、改築等の際に持っていると役立つ。木造住宅では、基礎伏図の他にも構造図として床伏図、梁伏図、小屋伏図、軸組図、構造基準図、構造詳細図などが作成される。
■既存不適格建築物
建築されたときには各種法令に準拠して建てられたのだが、その後の法改正や都市計画変更などによって、現行法に照らすと不適格な部分がある建築物のことである。「既存不適格建築物」は、建築時の法令に適合していれば、現行法には不適合でもすぐさま違法建築物とはならない。しかし、増改築や大規模修繕、大規模模様替えを実施する際には、原則として建物全体に現行法が適用されるため、現存する建物の広さや高さを維持できなくなったり、耐震性など構造上の問題で一から建て直しが必要になったりすることがある。また、「既存不適格建築物」は、半永久的に現行法にしたがわなくても良いと言うことではない。著しく危険と思われる場合や衛生上有害と考えられる「既存不適格建築物」は、建築基準法第10条に基づき、特定行政庁が所有者などに対して必要な措置を講じるように命じることができる。
■北側斜線
北側にある隣地の日照や通風に影響を与えないための、建築物の高さ制限のことで、北側斜線制限とも言う。斜線制限とは、建築基準法による建築物の高さ制限のひとつであり、制限高さが境界線から斜線をなして変化するので、この名前がついている。建物の再外端部から敷地北側の境界線までの、真北方向の水平距離を用いて制限高さを決める。旧第1種住専では、5メートル以上の部分は、境界部分からの水平距離と高さの関係を表す傾き1.25の直線によって高さを制限。旧第2住専では10メートル以上の部分について同様の規制がなされる。斜線制限には北側斜線制限の他、隣り合う建物の再考や通風を確保するための、隣地斜線制限や向かいの建物や道路の日照等を確保するための道路斜線制限がある。
■亀甲模様
正六角形の幾何学模様のことである。亀の甲羅の形に似ていることからこの名前が付けられた。日本では、長寿吉兆の象徴である亀に結びつくため、古くから親しまれている吉祥文様のひとつである。亀甲模様には様々な派生模様があり、単純な六角形をつなぎ合わせた亀甲繋(つな)ぎの他、六角形の中に花弁をあしらった亀甲花菱、亀甲を三つ組み合わせた毘沙門亀甲などが有名。日本で古くから用いられている他、西アジアでは紀元前のレリーフにも亀甲模様がみられるなど、世界的に用いられている。日本においては平安時代に有職文様として定着し、高貴な物とされていた。また、紋章にも多く使われ、出雲大社の紋などにも使われている。
■キッチンユニット
調理台、シンク、吊戸棚などが一体に構成され、さらに配管、配線まで施されたユニットのこと。工場で組み立てられて搬入されるため、現場では配管、配線をジョイントするだけで施工が完了する。これにより住宅工事でもっと手間のかかる、水まわりの工事を簡略化することが可能。システムキッチンとは異なり、備え付けの加熱機器は組み込んでいないため、ガスコンロなどを置いて使用する。様々な形式のものが存在するが、一般的なのは壁型のユニットだ。
■キッチンレイアウト
キッチンでのシンク、調理台、コンロ、冷蔵庫などの配置方法のこと。キッチンレイアウトの考え方は様々で、調理の流れを考えた配置や、キッチン内の動線を考えた配置、通路幅とキッチン寸法を考えた配置、というように人の動きを基準に考える。また、キッチンのタイプは、I型レイアウト、L型レイアウト、U型レイアウト、II型レイアウト、アイランド型、ペニンシュラ、という6種類が定番。また、使いやすさを考える場合には、冷蔵庫、食器棚の配置や向きも重要となってくる。特に、冷蔵庫はキッチンに必要不可欠な物のため、キッチンをデザインする際に十分考慮しなければならない。ドアの開きなど余裕を持たせた設計にする必要がある。
■木戸
屏(へい)や庭、通路にある簡単な木製の開き戸のこと。また、劇場、寄席、相撲などの興行場の入り口も木戸という他、城の門や柵の門、関所の門なども木戸である。一般的に、木製の板戸を木戸と呼ぶ。特に名前のついている物としては鼠木戸、折り木戸、町木戸、裏木戸などがある。鼠木戸は、単に鼠戸とも言い、木戸や門扉の一部に設けてある小さなくぐり戸のことだ。折り木戸とは、名前の通り折り畳みができる木戸のこと。町木戸は、江戸の町々にあった木戸のことで、夜には木戸番が警備にあたっていた。裏木戸とは、家の裏手に設けた木戸のことをさす。また、芝居小屋の裏手の出入り口、楽屋口のことも裏木戸と呼ぶ。
■木拾い
工事費を算出する手段のこと。木積もりと呼ばれることもある。木拾いは、設計図書から何がどれだけ必要なのかを算出し、数量や等級とともに一覧にして金額を添える。設計図書からすべてを拾い出していくことになるため、基本的な積算作業となるが、それだけに木構造を知らなければ行なうことはできない。特に木造軸組工法で行なわれているため、1本ずつ確実に拾っていくことになるからである。その中で、定尺で拾っていく作業も出てくるため、単に材料の数量が見えたとしても、どのように使われていくのかという知識がなければ作成できることではない。最終的に出来上がった一覧表は、積算表とは呼ばず、木拾い表と呼ばれる。
■気泡浴槽
ジェットバスと呼ばれているもののこと。浴槽内部の水や湯をポンプで循環させながら、発射口で気泡を含ませて噴射する。噴射口は、側面や底面に設置されていることが多く、筋肉をマッサージするだけでなくリラックス効果も期待できる。
■基本設計
施主からの与条件や、各種法規制などの条件を前提として、基本的な内容を図面で明らかにすること。基本設計では、「仕様書」「仕上表」「配置図」「平面図(各階)」「断面図」「立面図(東南西北の各面)」「概算見積書」などの設計図書が作成される。
■気密住宅
隙間相当面積が床面積1平方メートルあたりに対して5.0平方センチメートル以下になるような、隙間の少ない住宅のこと。隙間相当面積とは、機密を指す数値になるが、隙間面積を延べ床面積で割ったものになるため、少なければ少ないほど高い性能を持つ気密住宅になると言える。これをC値と呼んでいるが、次世代省エネルギー基準では、細かな規定が存在したものの、2008年改正によって規定自体は削除された。2×4工法などでは、隙間が少なくなるため、省エネルギー化を目指すことが可能。寒冷地では2平方センチメートル以下、一般地域では5平方センチメートル以下にすることによって、現在の高気密住宅としている。隙間がなくなり、エネルギーの消費を削減できるが、機密が高いために自然換気が難しく、24時間換気システムが不可欠だ。
■客土
よそから運び入れた土のことで、搬入土のことをさす。小規模なものから大規模な物まで様々。庭にある赤土を搬出して黒土にすることで、植物の育成に適した条件を作るといったことが行なわれる。土壌汚染などで大規模な場合には、いったん搬出してから安全な土を客土するという場合も。他にも土壌中に必要な要素が足りなくなったことで、搬入されるケースもあり、老朽化水田に鉄やマンガンを多く含む土を入れて生き返らせる。植栽といったことに適した土を入れるというだけではなく、構造物の耐力的な問題で行なわれることも。日本での歴史は古く、奈良時代までさかのぼることができ、平城京遷都のときに、低平地だったことから客土して構造的な耐力を改善したと考えられている。
■キャットウォーク
高所にある点検通路のこと。メンテナンス用の通路ではあるが、様々な作業にも使われる。建設時にも利用されることが多く、足場としての機能も高い。吊り橋のように、吊りワイヤーを必要とする場合には、これに対して足場を掛けるが、これもキャットウォークと呼ばれる。
■CAD・CAM
コンピューターを用いて設計したり製造を行なったりするシステムの総称こと。メカニカルデザインであり、製造過程に使っていくことで、手間を減らして精度を向上させる。そのため、製造機と連結させることが重要だ。自動的に完成品を作り出していくことができるようにシステムを作り上げる方法も。こうしたシステムは、自動車産業に多く見られ、マンパワーを減らすことができるようになっている他、製品精度の向上にも寄与している。木材のカットなども、作業図面の製作から自動管理までのシステムを構築することで、精度の高い部材を作ることが可能。CAD・CAMは、パッケージデザインなどにも応用されている。
■キャビネット
キッチン、洗面化粧台などの収納戸棚のこと。システムキッチンでは、ワークトップを支える部分のことを「フロアキャビネット」もしくは「ベースキャビネット」と呼び、壁や天井から取り付ける吊り戸棚は「ウォールキャビネット」と呼ばれる。洗面化粧台では、鏡の裏にある収納のことを「ミラーキャビネット」、洗面台本体の横の物を「サイドキャビネット」と言う。
■キャビネット図
箱型をした家具類に適した簡略図法で、正面は真っすぐに見え、他の面は45度傾けて見える図面。キャビネット図の描き方は、基準の水平線を描き、立体のひとつの面を正面にし、実物と同じ形に下描きする。奥行きを示す線を45度の方向に描く。奥行きを示す線の長さは、実際の長さの1/2に縮めて取り、下描きする。不要な線を消し、外形をはっきり描く。以上の順で描いて行く。これまでは方眼や斜眼黒板を用いられてきたが、最近では市販ソフトウェアを活用することも多い。また、面図を等比率で同じ形のまま縮小し、奥行きは45度の角度で1/2の縮尺で描く斜投影の代表は「キャビネット投影法」である。
■キャブチェア
サイドチェアのひとつで、コードバン革を使った物のこと。イタリア人で、国際的な工業デザイナーとして知られているマリオ・ベリーニがデザインした物をキャブチェアと名付けた。イタリアモダンの典型的なデザインであり、機能美の追求とも言える。フレームは金属で作り、耐久性も高める一方で、コードバン革によって全体を覆ってしまうため、金属的な質感は前面に出てこない。使えば使うほど、耐久性の高いコードバン革が味わいを高めていくため、部屋の中での存在感が高まる。シンプルでありながらも、構造強度という面でも高い機能性を有しており、空間をスタイリッシュな物に変えていくことができる椅子と言える。
■キャンチレバー
片持ち式の構造のこと。梁の一方だけを固定するだけで、もう一方は自由端にする。これによって、見た目に重さを感じないような軽やかな作りにできる。開放的な印象を作り出すことができるため、バルコニーなどに応用されているが、これをオーバーハングバルコニーと呼ぶ場合も。
■キューポラ
屋根に取り付けられている、小さな屋根の構造体のこと。形状は半球や円すい、四角すいなど様々で、屋根裏の換気をするためや、飾りとして付けられている。
■京壁
左官塗り壁のひとつで、京都を中心に発達した上塗りの工法のこと。西京壁と呼ぶこともある。製品の進化によって、繊維壁材などでも京壁風に仕上げることができるようになった。石灰や麻などの繊維を入れることで、独特の仕上がりを作り上げる。そのため、触ると表面が落ちてしまうが、現在の物は接着剤を混入して塗るため、あまり落ちなくなった。その代りに、仕上がりに堅さを感じることもある。京壁は定番の仕上げとも言えるが、それも柔らかさがあるからこそであるからでこそ、趣ということでは、現在の仕上がりは好まれない。下地が土壁ではなくなったことも、柔らかさを感じなくなった要因と言われる。
■京指物
京都の地域ブランドであり、平安時代から始まった家具のこと。指物とは、タンスや長持、机などを板の差合わせで作る木工のことで、作る職人を指物師と呼ぶ。木工であることから指物大工と呼ばれることもある。京指物が開花したのは茶道文化の確立があったためであり、高級な調度指物が多数作られた。茶道の流れによって、繊細な意匠が好まれるようになり、非常に緻密な技法が使われるようになる。木目も生かすが、耐久性も高めるための工夫が随所に凝らされているのが特徴。桑や桐の無垢板を使うことが多く、他の指物にはない優雅な姿を見ることができる。経済産業大臣指定伝統的工芸品の指定を受け、京都市のみで作られている。
■脇息
座ったときに使うことができる肘掛けのこと。奈良時代には挟軾(きょうしょく)と呼ばれていた。脇息の字のごとく、わきに置くことで体をあずけ休息をとることができる。木製の物の他にも竹製の物も作られた。長方形だけではなく、湾曲させることによって、使い勝手を向上させた物など、いろいろと存在する。
■京間
和風建築の間取り方式のひとつで、大間とも呼ばれる。柱間寸法が6.5尺(196.9cm)のため、6尺(182cm)を1間とする田舎間より畳の寸法が大きい。畳のサイズは、地域や畳が敷かれる場所により5つに分類できる。京間と本間は191cm×95.5cmで、京都を始め関西方面で使用される。六一間は185cm×92.5cmで、岡山、広島、山口などの山陰地方。中京間、三六間は182cm×91cmで、岐阜、名古屋などの中京地方、岩手、山形、福島、北陸、沖縄の一部地域。江戸間、五八間、田舎間は176cm×88cmで、東京を始め関東地方と全国各地で一般的。団地間、五六間は170cm×85cmで、アパートやマンションなどの集合住宅で使用される。
■京間
和風建築の間取り方式のひとつで、大間とも呼ばれる。柱間寸法が6.5尺(196.9cm)のため、6尺(182cm)を1間とする田舎間より畳の寸法が大きい。畳のサイズは、地域や畳が敷かれる場所により5つに分類できる。京間と本間は191cm×95.5cmで、京都を始め関西方面で使用される。六一間は185cm×92.5cmで、岡山、広島、山口などの山陰地方。中京間、三六間は182cm×91cmで、岐阜、名古屋などの中京地方、岩手、山形、福島、北陸、沖縄の一部地域。江戸間、五八間、田舎間は176cm×88cmで、東京を始め関東地方と全国各地で一般的。団地間、五六間は170cm×85cmで、アパートやマンションなどの集合住宅で使用される。
■居室
居住や娯楽などの用途に継続して使用する部屋のこと。その定義は、建築基準法で定められている。居住や娯楽、作業といった目的で継続的に使用する部屋と定義されているため、これに照らし合わせると住宅では居間、寝室、台所などが該当。一方、浴室や玄関、洗面所、トイレといった部分は継続的に使用することが困難なため、居室には該当しない。居住目的で使用する「居室」は、建築基準法によって採光と換気の基準が定められているため、これをクリアしなければならない。地下室の場合は、採光を確保することができないため、その代わりに防湿の措置などを行なう。
■切妻屋根
屋根形状のひとつで、棟から両側に勾配の流れを持つ屋根のこと。単純な山形の屋根で、中には左右で違う勾配の屋根もある。
■切土
傾斜地で行なわれる造成工事のこと。整地するための工事で、傾斜を切り取ることで平坦な地面を作り出す。盛土に比べてもとの地盤を利用するというところが重要だ。切土した面は、長年圧力を受けていた場所であり、安定していると考えられ、地盤は固いと言われている。住宅建築ということでは、優良な場所になりやすい。切り取った土に関しても切土と呼ぶ。切土することによって、盛土との体積を近づけることもでき、切土を使って盛土することによって、コストも抑えることが可能。どんなところでも切土ができるわけではなく、住宅造成工事規制区域の中にある住宅の場合には、高さが2メートルを超えるような場合に、事前に知事の許可を受け擁壁を設けるなどの必要が生じる。
■キリム
トルコ語で毛足の長い平織の絨毯のこと。綴れ織りに近い。縦糸と横糸に結び糸を加えて織りあげた、歴史の長い毛足のある絨毯。トルコのアナトリア地方で紀元前700年あたりに始まったと言われており、実際に布が残存している。他の地域でも見られることから、文化的に広まっていたことは間違いない。利用価値も高かったことから、支配者となった国々が手厚く保護したことによって、今でも継承されていると考えられる。遊牧民のテント生活としては必要不可欠であり、食事用の布としても使われた。キリムを用意しておけば、何かあったときの財産としても使うことができるほど、重要な価値のある物もある。現在はインテリアとして豪華な雰囲気を醸し出すことに使われる。
■亀裂誘発目地
乾燥収縮の応力を集中させておくことで、健全な躯体(くたい)構造を作り出すための目地のこと。意図的に一定間隔で設けることによって、他の部分に乾燥収縮による亀裂を発生させないですむ。できるだけ被害を出さないようにするため、構造設計の段階で盛り込むことが重要となってくる。亀裂誘発目地を作ったとしても、そのままにしておけば、浸水を許すことになり、構造の劣化を招くことになるため、シーリング材など伸縮性のある充填剤を詰めておく。これにより、構造全体を守ることにもつながる。伸縮目地と混同されることがあるが、これは熱膨張に対する備えであり、緩衝材を入れておくことによって、熱膨張の力を逃がすことができる。
■木割り
社寺建築におけるルールのこと。多くの社寺が木割りによってルール付けされていることで、バランスが取れるようになっている。建築対象の大小は関係なく、部材の寸法や組み合わせが比例によって決められていることが大きい。これによって、どこでも同じように作り上げることができるからであり、海外でも似たような考え方が存在する。垂木の断面寸法が基準となっており、ここから各部材寸法が決められていく。柱間の距離も決まるようになり、天井高を決めるなど順番もある。比例関係でできあがっていく方法となるが、経験的な手法でもあり、伝承していくことで今でも形として残り続けた。建築図も残っているが、木割所と呼ばれる文献も残されており、古い物は室町時代後期の物であり、当時の建築様式を詳細に見て取ることができる。
■近隣商業地域
近隣に住まう住人が利用するべく作られた商業地域のことで、娯楽施設やスーパー、オフィスなど、商業に関する施設がその対象になっており、都市開発の際には必ず組み込まれる。大型ビルが建てられる際に、オフィス階と住宅階が併設されるのもその一環。「近隣商業地域」は、都市計画法によりその事業や用途が定められており、風俗営業や騒音、煙を立てる工場など近隣住民の生活に影響を与える施設については、規制される。また、「近隣商業地域」の詳細は、地域の地方公共団体が決定するため、観光都市では美観を損なわないことに重点を置き、建物の色彩に制限をしたり、近代的な外観の建築物を禁じたりすることもある。
■擬宝珠(ギボウシュ/ギボシ)
建築装飾のひとつで、神社や寺院において、階段に設置された手すりの柱の上に取り付けられている物のこと。ネギの花であるネギ坊主に似ていることから、葱台と呼ばれることもある。擬宝珠は、親柱にしか取り付けられることはなく、基本としては両端だけに取り付けることになるが、一定間隔で親柱を作り設置されている例も。装飾としてだけの物ではなく、親柱が木製になっている場合、擬宝珠を青銅などにすることにより、雨からの浸食から守る役割も持つ。すべて石造りといった例もあるが、木製の物や瓦でできているといった希少な例が存在する。擬宝珠であって、宝珠ではないため、五重塔や五輪塔に見られる先端の飾りとは別の物であるのは、宝珠とは別の由来を持っている例があるためだ。
■銀杏面
近柱などの面取り方法のこと。銀杏のような断面をしていることに由来する。机やテーブルでも見ることができ、洋間の額縁をはじめ棚板やラックによく使われている。丸みを持っているだけではなく、両端の直角面を持っていることが特徴で、片側だけ直角面を付ける方法を片銀杏面と呼ぶ。几帳面の派生型であり、4分の1の円形で、でっぱり面を作っている。角の部分が丸くなることで欠けにくくなるが、見た目にそこまで複雑ではなく、直角部分が影を作り出すため、柔らかさもありながら締まるデザインにできる。以前は銀杏面専用の鉋(かんな)を使い加工していったが、ひじょうに難易度の高い加工方法で、職人も少なかった。現在はルーターを使って加工できるようになったため、難しい加工ではなくなった。
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